第2章 テセリア国
雪山を超えると関所がある。
しかし、テセリアとガルバルスは友好関係にあるためガルバルスからの来訪者には厳しくはない。だが、通行手形が無い。
通行手形が無ければ通れない。テセリアは通行手形は比較的簡単に手に入るのだが、
ウィルはそれを知らずにきてしまったようである。
「ウィル様であらされますか」
関所の人間から声をかけられた。
「ガロルド将軍様からお話は聞いております。さぁ、こちらの通行手形をお受け取り下さい」
ガロルドが事前に手配していたようだ。渡されたのは通行手形。テセリアのでは無い。
オルガルド王国の通行手形である。
「オルガルド王国は関所が厳しいです。しかし、この手形さえあれば大丈夫です。
我々テセリアはガルバルス帝国の産業により、ここまで大きくなられたことを国王は感謝しております」
ウィルはテセリアの関所を後にした。
テセリアの特徴はガルバルスの影響を受けているということ。だが隣はオルガルド。大きくは出せない。
ガルバルスの軍事革命の鍵にテセリアが存在する。テセリアの地盤は鉱山で、ガルバルスよりも多く採掘ができる。そこに目をつけたガルバルスは金の取引をし、互いの成長を助け合ってきたのだ。
テセリア バグロスト市
雪が降る街並みに、積もった雪から覗くレンガ造り。寒さに適応した所である。
このテセリアからはオルガルドへ、電車で向かう。山並みのガルバルスでは電車は不可能であり、それに比べて平らなテセリアでは発展した。
街中では人々が行き交う。分からないながらも駅へと向かう。
道中に子連れの親子がいた。
楽しそうに会話をしている。
ウィルはその様子に目をそらした。
所持金はテセリアからオルガルド方面行きの電車に乗って底を尽きてしまう。
列車内でパンを買う。ギリギリながらもウィルが大好きなシュガーパンを買ったのだ。
この時のウィルは子供のような、可愛らしい笑顔を浮かべていた。
「やだやだー!何か食べたーいよぅ!」
子連れ親子の子供がぐずり始めた。
「仕方ないでしょう!ほら周りの皆に迷惑がかかるから静かにして、ね?」
子供はどうやらお腹をすかしてぐずり始めたようだ。
ウィルは自分の手にあるパンを見つめる。
よく見ればあの親子の服装はボロボロである。
ウィルは席を立ちパンをスっと差し出す。
「うるさいから…、これでだまって」
「わーい!」
子供はウィルの手からパンを取った。
「こら!人様の物を取るんじゃありません!」
しかし子供は口につけてしまっている。
「ごめんなさい…。でもどうしましょう、生憎持ち合わせが無くて…」
オロオロしている母親の手のひらから見える少ない小銭。
「別に…。いつでも食べられるからいいよ」
ウィルはそう言って席に戻る。
窓から眺める雪景色。
切なく儚く通り過ぎる。
次の駅に到着すると、先程の母親がウィルの前を通りお辞儀をし、降りていった。
目的駅まであと1時間。
目をつむり、静かに寝入っていった。
RPGゲーム感覚で読んでいただけると、
そんな気分になります