第八十六片 微小な変化、しかしそれは大きな変化
一ヶ月という月日を主なしで過ごした家は、それでも綺麗だった。
じいちゃんとばあちゃんが定期的に掃除してくれていたらしい。
久しぶりの自分のベッドに、仰向けに倒れてみる。
嗅ぎなれた自分の布団の匂い。落ち着く……。
大きな窓から見える空は夜と夕暮れの狭間だった。境目はとても淡く、魅力的だ。
帰り道で買った弁当を食べ、明日からの学校の用意をした。
真山に連絡を取って、明日の予習部分を教えてもらった。
それだけでは済まず、真山は俺が休んでいた時の全ノートをコピーしてくれると言い出した。
一ヶ月ともなれば量も相当だろう。そんな苦労は掛けられない。
そう言ってみたが、真山は頑固だった。
どうするか。ここで引き下がると真山に苦労を掛けるし、かといってコチラが意地を張って拒否するのも真山に悪い気がする。
うーん……。
……まあ、たまには頼ってみてもいいか。
「それじゃあ、お願いする。また何かおごる」
とメッセージを送ると、
「おやつ一個で許してやる笑」
と返信が来た。
何だか、少し嬉しかった。
それからは予習と、できる限りの宿題をしたのち、風呂に入って、就寝した。