第八十三片 まさかの告白
「俺は調査員なのよ」
野薪先生は簡潔に説明してくれた。簡潔すぎるほどに。
「現世のこと調べて願世で流す的なやつですか」
「まあ流しはしないけど要望があったら情報渡すのもやぶさかじゃないよ的なやつ」
「いつからですか」
「大体十四、五年くらい前からかな」
「県の教育免許とかはどうしたんですか」
「偽造しようとしたけど神様方に『ちゃんととれ』って言われたから事前情報だけ作ってもらって普通にとったよ」
「……」
「まあまあ、そんな怖い顔すんなって。年になってから皴増えるぞ」
まったく。何と言っていいのかわからない。騙されてたことに関してはあまり何も感じるところはない(というか前々から得体のしれないところがあるなとは思っていた)けど、こっちで会ったこと、その立場も相まって、意外性が甚だしかった。
「おい、そこのお前、クロア様に対して無礼だぞ」
金髪イケメンが俺と野薪先生の間に割って入ってきた。少々顔が険しいのは、言葉通りの理由だろう。
「まあまあ、キュラタ。こいつは俺の生徒だから、下がっておけ」と野薪先生から説明を受けると「はっ、それは失礼いたしました」とお辞儀をして、下がっていった。
キュラタと呼ばれた美男に対して、髭面の男性のほうは見向きもしていない。
「タッカのことが気になるのか?」
「あ、いえ。全然気にしないな、と」
「キュラタもそう気にする奴じゃない。今回は一応役割として言いに来ただけで、お前と俺の関係は俺の言葉遣いから察していたはずだ。キュラタが来てなければタッカが来てた。キュラタが声をかけたならば自分は声をわざわざかける必要はない。そんな感じだろ」
「まさにそうですよ、クロア様」
目は遠くの方を見張っているのに、俺たちの話をちゃんと聞いていたようだ。
部下との信頼関係が厚いんだな。まあここに召集されるくらいの人たちだから、厚くて当たり前か。
「さて、それでは首都までは遠いが、竜輸送隊を手配した。あと数分でこちらにつくだろうから、全員、私の先導に従って輸送集合場所まで移動してくれ」
ネイストさんの呼びかけを受けて、国ごとにぞろぞろと集団が動き出した。
首都につけば、会議が始まることだろう。
一体、どんなことになるのだろうか。