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仮面と旅する別世界  作者: 楸 椿榎
モルフェディア編
88/123

邂逅片・参

 林の中にある町・ムテン。

 そこへ向かう俺たちとリツォンコーネ組の速度は、さほど変わらなかった。あちらが着いて間もなく、俺たちもムテンに到着した。

 町の入り口に設置されている屯所前で、何やら話している。


「それじゃあ俺は事務処理をしとくから、今日一日は各自自由行動とする。明日は謁見になるだろう」

「はいはい、了解」

「……了解」

「分かりました」

「俺はこいつらを別の場所にうつしてくるよ」


 アスナロウさんは屯所の中へと入っていく。

 ザックさんは俺たちを見つけると、片手をあげて反応を示したあと、ひとり町の中へと歩いていく。

 メナさんの眼光が鋭くなり、すぐさまザックさんの隣に駆けていった。


「ザック、単独行動は厳禁」

「わーってるよ。ツーマンセルならいいんだろ」


 そのまま二人は、町中に消えた。

 椛さんは魔物たちをどこかへ誘導していった。近くにいい場所を知っているんだろうか?

 

 俺たちも屯所前で馬から降りると、兵士さんたちが「手続きは我々がするから、君は町に入っといてくれていいよ」と笑顔で言ってくれた。

 わかりました、ありがとうございます。とお辞儀をして、三人が屯所に入っていくのを見送った。

 屯所というか、テント? 隣に崩れた石造りの建物が見えるが、おそらくはこっちが本物で、今のこれは仮設だろう。


 さて、どうしたものか。

 町に入って手伝いが要る場所を見つけるか。それとも……。

 …………なんか、隣からすごい視線を感じる。



「……?」

「…………」


 視線を横に向けると、須藤がこちらをじっと見つめていた。

 人にまじまじと見つめられるのは、プレッシャーがかかって苦手だな……。


「言葉にしなきゃ、伝わんないわよ」

「……」


 サクラさんが何かを囁くと、須藤は空を仰いでから、再度俺に視線をぶつけてきた。

 何を言うつもりなんだ……?


「……お前、剣はできるか」

「え?」

「剣術はできるかと聞いている」

「いや、今まで銃で戦ってきて、剣に関してはからっきしだ」

「……」


 俺の返答を聞くと須藤は黙りこみ、顎に手を当てた。

 そのまま、どこぞへとふらふら歩き出した。

 危うい足取りに、不安を覚えてしまう。


「お、おい」

「あー」


 俺が声をかけようとしたのとほぼ同時に、サクラさんが後ろ頭をかきながら割り込んできた。


「もし時間があれば、彼に付き合ってくれないかしら? 現世の子。あの子、何かしたいみたいだから」


 人差し指で須藤を指すサクラさん。その微笑みは保護者のそれに似ている気がする。

 まぁ、数少ない、もとい、現在俺と彼しか確認されていない、こちらの世界にいる現世人。コミュニケーションをとるのもいいかもしれない。


「いい、ですよ」

「そう? よかった。それじゃ、あいつについて行きましょ」


 というわけで、俺はサクラさんと共に、須藤のあとを追った。

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