邂逅片・参
林の中にある町・ムテン。
そこへ向かう俺たちとリツォンコーネ組の速度は、さほど変わらなかった。あちらが着いて間もなく、俺たちもムテンに到着した。
町の入り口に設置されている屯所前で、何やら話している。
「それじゃあ俺は事務処理をしとくから、今日一日は各自自由行動とする。明日は謁見になるだろう」
「はいはい、了解」
「……了解」
「分かりました」
「俺はこいつらを別の場所にうつしてくるよ」
アスナロウさんは屯所の中へと入っていく。
ザックさんは俺たちを見つけると、片手をあげて反応を示したあと、ひとり町の中へと歩いていく。
メナさんの眼光が鋭くなり、すぐさまザックさんの隣に駆けていった。
「ザック、単独行動は厳禁」
「わーってるよ。ツーマンセルならいいんだろ」
そのまま二人は、町中に消えた。
椛さんは魔物たちをどこかへ誘導していった。近くにいい場所を知っているんだろうか?
俺たちも屯所前で馬から降りると、兵士さんたちが「手続きは我々がするから、君は町に入っといてくれていいよ」と笑顔で言ってくれた。
わかりました、ありがとうございます。とお辞儀をして、三人が屯所に入っていくのを見送った。
屯所というか、テント? 隣に崩れた石造りの建物が見えるが、おそらくはこっちが本物で、今のこれは仮設だろう。
さて、どうしたものか。
町に入って手伝いが要る場所を見つけるか。それとも……。
…………なんか、隣からすごい視線を感じる。
「……?」
「…………」
視線を横に向けると、須藤がこちらをじっと見つめていた。
人にまじまじと見つめられるのは、プレッシャーがかかって苦手だな……。
「言葉にしなきゃ、伝わんないわよ」
「……」
サクラさんが何かを囁くと、須藤は空を仰いでから、再度俺に視線をぶつけてきた。
何を言うつもりなんだ……?
「……お前、剣はできるか」
「え?」
「剣術はできるかと聞いている」
「いや、今まで銃で戦ってきて、剣に関してはからっきしだ」
「……」
俺の返答を聞くと須藤は黙りこみ、顎に手を当てた。
そのまま、どこぞへとふらふら歩き出した。
危うい足取りに、不安を覚えてしまう。
「お、おい」
「あー」
俺が声をかけようとしたのとほぼ同時に、サクラさんが後ろ頭をかきながら割り込んできた。
「もし時間があれば、彼に付き合ってくれないかしら? 現世の子。あの子、何かしたいみたいだから」
人差し指で須藤を指すサクラさん。その微笑みは保護者のそれに似ている気がする。
まぁ、数少ない、もとい、現在俺と彼しか確認されていない、こちらの世界にいる現世人。コミュニケーションをとるのもいいかもしれない。
「いい、ですよ」
「そう? よかった。それじゃ、あいつについて行きましょ」
というわけで、俺はサクラさんと共に、須藤のあとを追った。