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仮面と旅する別世界  作者: 楸 椿榎
モルフェディア編
87/123

続・邂逅片

「迷惑をかけた。手助け感謝する」


 感情を感じさせない、平坦な声だった。暗いわけでもないが、明るくはない。体にまとう服もそうだが、彼は黒という色がよく似合う。初対面ながらそう思った。


「無事かー! おーい!」


 上から声がする。どこかで聞いたような声だ。


「おいバカ! 大丈夫か!」

「おやおやまぁまぁ」

「…………」


 上を見上げると、そこにはすごい光景が広がっていた。

 三メートルは優に越えるであろう鷹が三羽、腕のない龍が一匹、そしてグリフォンが一匹。

 それぞれの背に人が乗っているのが確認できる。

 巨大な魔物たちが着陸したところで、乗っていた人たちが降りてくる。そのなかには一人、見覚えのある顔が見えた。


「えっと、確か……」

「あぁ、冬くんだったね。俺は(もみじ)。久しぶり」

「……久しぶりです、椛さん」


 笑顔で答えるナイスミドル。大人の気遣いとはこういうことか。


「お前はアホか! どうしてあそこで落ちたんだ!」

「仕方ないだろ、そうするしかないと思ったからだ」

「お前に死なれたら困るのはこっちなんだよ!」

「……死んでないが?」

「てめぇ……」

「ザック、そのへんにしとけ」

「そう、うるさい」

「んだと!?」

「メナも、わざわざ怒らせるな」

「……はい」


 椛さん以外の三人は、黒髪の彼と話している。黒髪の青年が一人、その青年と同い年あたりと見受けられる女性が一人、二人の上官らしき人が一人。

 全員体型は細めだが体つきはしっかりしていて、同じ青色の軍服を着ている。肩や胸に飾りはなく、長袖のスポーツウェアみたいでとても動きやすそうだ。

 異国の軍隊の人か? だとしたら、なぜアストリアに?


「……あぁ、すみません。突然お邪魔してしまって」


 灰色の髪をひとつ括りにしている上官さんが、こちらに向き直って胸に手を当てた。


「私たちは、そちらの国王レジル様、そして我らが皇女アイリッシュ様の命にて参りました、アスナロウ小隊でございます」


「俺はこの人たちの案内役として来たんだよ」と椛が補足をいれてきた。


 リツォンコーネ大陸。"現世"で言うところのヨーロッパ&アフリカにあたる大陸で、北部は魔術の都として有名だと聞いたことがある。

 そんな国から使者が来るとは、しかもレジルさんの命令で、ときた。……何かが起こるのかもしれない。


「私はアスナロウ小隊隊長のアスナロウ・シプラス。こちらはうちの隊員のザック・バラン、メナ・スティアです」

「ザックだ。よろしく」


 短い黒髪、金眼の青年、彼が、ザック・バラン。

 今までの口調を見るに、かなり短気な人みたいだ。


「……メナです」


 ミディアムというのか、肩につくかつかないかくらいの黒髪と碧眼の女性、彼女が、メナ・スティア。

 引っ込み思案なのか、人嫌いなのか、よくわからない人だ。


「そして、こちらが"現世"からやって来た須藤春(すどう はる)君と、その相棒の夜桜だ」

「サクラ」


 春と呼ばれた彼が一言言うと、目を覆っていた仮面は光と共に消滅し、代わりに黒い着物に長い黒髪の成人女性らしき人が現れた。


 ……俺は、これと同じ現象を知っている。


「もしかして、その人は」

「いかにも。私は君のその子と同じ、『面族』だ」


 流れる川が描かれた着物を着こなす彼女は、俺の心中を読んだかのように答えてきた。俺の顔を指差して、もとい、顔を覆っている白雪を指差して。


「まぁ自己紹介が終わったところで、立ち話もなんだし屯所まで移動しないかい、諸君」


 椛さんは隠さず欠伸をする魔物たちを見渡し、俺たちにも目を配った。


「確かに、いろいろと連絡すべきこともあるしな」


 アスナロウさんが同意を示す。


「長い話をするなら、ちゃんと腰を落ち着けてした方がいいわよね」


 夜桜も緩く腕を組ながら頷く。


「ならそうするか」「……」「別にそれで構わない」


 そんなわけで、俺たちと派遣隊は、ムテンで再度集合することにし、別行動となった。

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