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仮面と旅する別世界  作者: 楸 椿榎
モルフェディア編
80/123

第七十二片 『一か八かの切り札として』

 “現世”で大流行したモンスター討伐ゲームみたいな状況を目の当たりにするなんて、誰が想像するだろうか。


「キァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 いや、誰も想像しないだろう。こんな世界は夢のまた夢。そう思うのが普通だし、俺だってその普通の中の一人だった。

 しかし、現に俺は今経験している。咆哮を上げる竜を視界の内に捉え、仲間とともに攻撃の態勢をとっている。


「フユ、来るぞ!」

「はい!」


 竜は上空から一気にこっち目掛けて降下してきた。

 何発か撃ってみるが、案の定、戦闘機の機関銃の弾すら跳ね返す鱗には歯が立たない。

 寸でのところで、足に魔力を溜め、横っ飛びで回避する。

 すかさず五倍弾を数発。これも効かない。


「ファイアッ!」


 エースさんが一発目を放った。

 弾はほぼ直線にも見える放物線軌道を辿り、上昇に入っていた竜の右翼に命中した。

 しかし、竜は平気な顔でまた上空へと昇って行ってしまった。


―――*―――*―――


 そんなことを、もう何回繰り返しただろうか。

 五十倍弾まで威力を上げても、あの鱗には傷一つつかない。

 どうすりゃいいんだ。


「冬さん」


 手が詰まって悩んでいる所に、白雪が語り掛けてきた。


「今こそ、弾の変形を実践するときだと思います」


 それは、エースさんと話していたあの技術。

 弾の形をイメージによって変えることで、様々な用途に対応するという技。


「……ぶっつけ本番でやる気か?」

「やらないとやられそうなのに、やらない理由はありません」


 ……ユキは最初の崖の時といい、今といい、時々思い切ったことを言う奴だ。

 でも、確かにやるっきゃない。


「ならいくぞ。形がいびつだったときは、補正してくれ」

「分かりました」


 よし。竜の方も疲れたのか、まだ滞空している。今のうちに形成するんだ。

 銃を竜に向かって構えたまま、考える。

 イメージするのは、槍のように鋭い弾。

 目を瞑って、より鮮明に想像していく。

 あの硬い鱗すらも突き通す弾。

 逃げる余地を与えない速い弾。

 通常より細く、先が尖っている弾。

 名付けるとしたら……。


「『尖弾』」


 俺は思わず口に出していた。

 そして目を開けると、俺の言葉が引き金になったのか、銃口に小さな魔法陣が生成された。

 青色の魔法陣からは、淡い光を放つ魔力の筋が銃身へと流れていく。

 俺の手からも、同じように筋が伸びていく。

それが感じられる。

 それらは近づくと、互いに絡み合い、結びつき、一本の太い線となった。

 線の光が、一層強くなり、次第に消えていった。

 すると、


「弾の変形、できました!」


 白雪の嬉々とした声が聞こえてきた。


「よし、これで」


 竜に対抗できる。

 まだ決定事項ではないが、残弾から考えても、望みは大きいと思う。


「フユ、来るぞ!」


 エースさんの声がした。視線を銃身から竜のいた方に移すと、そこにもう竜はいなかった。

 真っ逆さまに地面に降下し、勢いそのままに俺たちの方へ超速低空飛行で向かってくる。

 俺はすぐさま回避行動をとった。横にではなく、


「ふん!」


 上に。

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