第六十九片 『救援として』
……。ん、今日も願世に到ちゃ……、ん? ユキと、もう一人誰かの声が、
「……ユ! 起きたか冬! はやく準備しろ!」
「は、はい!」
願世に来て早々、寝床のすぐ横に立っていたエースさんに怒鳴られた。心臓が飛び出そうなほど脈拍が上がる。
急いで着替えながら指令室なるところに呼び出されていることを聞き、着替え終わるとエースさんに導かれながらその指令室に走って向かった。
いざ到着してみれば、そこは一昨日も来た国王の部屋の前だった。
ドアのスイッチをエースさんが荒々しく叩く。
両開きのドアは平然と開いた。
「連れてきましたよ国王!」
エースさんの声には隠そうともしていないイラつきがにじみ出ていた。
イラつく原因を作った俺が言えることではないが、国王に向かってそんな口の利き方をして大丈夫なのだろうか。
「ご苦労、クエード」
「げ、少将……」
「?」
部屋の中には国王ともう一人。エースさんと同じ軍服姿の女性が立っていた。小麦色の肌に青色の目。白い髪を短く揃え、細身の体にぴっちりと合った服が体のラインを強調している。
「そちらが冬くん、だったよね?」
「あ、はい」
いきなり言葉を投げかけられて一瞬焦る。
「マヤ少将、俺を信用してないんですか?」
「早速説明を行うから、三人ともこちらに来てくれ」
「無視ね、はいはい」
俺たちにしか聞こえないくらいの小声でエースさんは内心を呟き捨てた。
部屋の中央で円卓を囲ん、で俺たちと国王たちが集合した。机の上にはこの国の地理を表した地図が置かれていた。オーストラリアに酷似しているがどこか違う概形。地図の中心に首都がくる形で作られている。
首都から見て南東の地点を指さしながら、マヤさんは口を開いた。
「今日未明、装置を輸送していたヘリの一団がモンスターからの襲撃を受けた」
突然の、予想外の報告に、俺は「え」と声を漏らした。
「詳細は一切不明。でもソイツはそれからもう三隊も潰している」
言いながらマヤさんの指はスーッと時計回りに南西まで動かした。
「それで、今陸軍と空軍が他の輸送隊の警護に走ってる」
「で、俺たちもお前が起きて事情を説明し次第行く予定だったってわけだ。んじゃ俺はエンジンふかしてくるんで!」
言い終わるが早いか、エースさんは部屋を出てどこぞへと走っていた。
「君も早く後を追った方がいいよ」
マヤさんが、出口を顎で指しながら言ってきた。彼の気性を考えると、俺を置いて飛び出してもおかしくないのだとか。
「だから、はやく行きな」
「分かりました」
俺たちは一礼してから、国王たちに背を向けて走り出した。