第六十八片 『何事もない一日として』
「てことは、自分で込める弾の形を操作することも出来るってことですか?」
「そうそう。まぁ、これについてはある程度の修練が必要だと思うけどな」
「そうですか……」
昼前から始まり、三時に一度小休止を挟み、それからまた再開された会話の結果、時間はもう六時ごろになっていた。窓の外はほとんど闇に包まれている。
「そのことなんですけど」
「ん?」
今まで隣でじっとしていたユキが、唐突に口を開いた。
「もしかしたら、できるかもしれません」
「何が?」
「打ち出す弾の形状変化です」
ユキの言葉に、俺は目を見開いた。
「それは、本当か?」
「ええ、多分。……おそらくですが」
な、なんだ? かなり自信のない言い様だな。
「これに関しては、やってみないと何とも……。できることはできますが、私たち次第の部分が大きいですので」
「まぁそれはそうだな。お前たちの場合、二人だから幾分かやりやすくはあるかもしれんが、想像力と実力が合ってないとできない芸当だからな」
なるほど、エースさん補足ありがとう。
「それなら、明日にでも外で試してくれば?」
建物の入り口の方から届いた声。オルタさんが帰ってきたのだ。
「たぶん明日も報告待ち以外にやることはない。そんなら暇潰しに、周りの砂にでも魔物にでも撃ってくればいいじゃんってことさ」
車より速いヘリで運んでいるが、いくらヘリでも設置拠点に到着まではある程度かかる。しかも報告待ちなんて数人いれば事足りる。緊急時に対応できるように特定範囲内でやってもらうことになるとは思うが、力をつけるのに修練は必要だ。と、オルタさんは語ってくれた。
この世界に慣れてきたとはいえ、二ヶ月ほどほぼ寝たきりだった俺にしてみれば願ってもないことだ。修練は多いに越したことはない。
「それじゃあ、明日はそうさせてもらいます」
「うんうん」
「俺もついてくぞ。実地でコツを教えよう」
「お願いします」
よし、話がいいようにまとまった。
「冬さん、そろそろ時間が」
「おっと、そうだな。それじゃあ、俺はこれで」
二人に別れを告げて、俺たちは自分達の部屋に戻っていった。
そしてユキに頭を打ってもらって、現世へと帰る。
また明日も、何事もなく一日が進むという、根拠のない、平和ボケした考えのままで。