第六十七片 『関係作りとして・二』
オルタさんは「じゃあ頑張って」とだけ残して、どこかに消えていった。
おそらくは運搬指示か、現場にいくのか、というところだろう。
オルタさんが場からいなくなってから、ぎこちなさはあるものの、俺たちは徐々にお互いのことを語っていった。エースさんは灰色の軍服に前掛けをかけ、一口食べては話し、俺も一口食べては話し。
スプーンが進むごとに俺たちの間の隔たり、もとい遠慮は削がれていった。
「エースさん、そんなことしてて大丈夫なんですか? 飛行機の調子見に行くとか嘘吹いて勝手に軍の戦闘機で空を飛ぶって、文面から見たら即打ち首ものな感じがしますよ?」
最後の一口を飲み込んでから、俺が言葉をぶつけていると、ユキが「冬さん、少しはオブラートに包んで……」と助言を入れた。
いやしかし、話を聞く限り俺の言葉選びに間違いはない。だってこの人、全く悪びれてないんだから。というよりその行為に誇りを持っていそうなんだから。
「いやー、このくらい言うのが普通ってもんだよユキちゃん」
何でそれを分かってるのにやるんだあなたは。そしてユキちゃんとか「ちゃん」付けしないでもらいたい。呼び方はその人の勝手だけどなんだか嫌だ。
一応、俺がパートナーですから。ライク的なパートナーですから。変な近寄り方はやめてほしいものだ。
「でもな。男には、貫かなきゃならないものがあるんだよ」
「格好よく言っても無駄ですから」
貫くなら軍法を貫いてくれ。
「しかもそれは揉み消せるし」
「何サラッととんでもないこと言ってんですか」
上にこの人の関係者がいるのか。
なんでそんなことやってんだよ。
「それはさておき、俺は白兵戦もできるんだぜ?」
「話変えすぎでしょ」
さておいてたらいつかこの軍、とまでは行かないまでもあんたは滅ぶと俺は思う。
「いや、これが多分、オルタさんが俺とフユを会わせた理由だと思うんだよ」
エースさんのその意味深な台詞に、俺は二の句を継げなかった。
オルタさんが俺とエースさんを会わせた理由が、白兵戦の中にある?
「俺の攻撃手段は、魔砲なんだよ」
「魔法?」
「そう、魔砲」
「魔法……」
何故に魔法でそんなにどや顔っぼくなるんだ? 魔法……確かに俺も使ったことはあるけど、それなら魔術師団の方が適している気が……。
「その顔……。なあ、今どんな字を思い浮かべてる?」
「へ? 魔物の『魔』に法律の『法』ですけど」
「あぁぁ、やっぱりか! それじゃないそれじゃない! 『魔』力の大『砲』、いや『砲』撃? まぁその二文字で魔砲だ」
おっと。それは確かに何かしら魔銃との共通点があってもおかしくない武器だ。もしかしたら、魔銃の今以上の活用に役立つテクニックなんかも見出だせるかもしれない。
そこから俺も前のめり気味になり、エースさんと話に花を咲かせた。
「魔銃との共通点ってやっぱりあるんですか?」
「そりゃ基本構造というか使い方は同じだからな」
「なんか使うときのコツとかありますか?」
「ああ、それはな……」
「あ、あの……」
「銃や砲のモデルになった、原形となった武器とかもやはりあるんですか?」
「ああ、それは少し話が長くなるんだがな……」
「ほうほう……」
「あの、ご飯の方を……」
「で、ここで局地戦なんかで使いやすいように分化が起こってな」
「なるほどなるほど」
「……」
一人、ユキだけがその場でおいてけぼりを食らっていた。