第五十七片 『飄々として・裏』
謁見部屋を出てから、俺達はオルタさんの後をついて歩いていた。どうやら玄関に向かっているようだ。
と、突然オルタさんがなにか思い付いたような声を出して、こちらに体の向きを変えた。足取りはそのままに。
「そういえば言ってなかったよね、今回の作戦」
こちらの返答は聞かず、オルタさんは話し始めた。階段に差し掛かろうと、足取りは変わらない。
「今回はさっきおうさまが言ってた通り、他国の救援が目的。あの装置をモルフェディアの方に持ってって、設置も手伝うことになってる。俺たちだけじゃ足りないから、うちの部隊のやつらも連れてくよ。なにか質問ある?」
俺は首を横に振った。だが、ユキは一つだけ尋ねた。
「オルタの部隊は、もう港に行ってるの?」
オルタ、と呼び捨てにしたことに少し驚いたが、聞かれた本人はなにも気にしていないようだった。
「そうだよ。あっちで先に準備してもらってる。俺らがついたら行けるようにね」
「そう。なら安心だね」
ユキが笑みを浮かべると、「そゆこと」とオルタさんも笑ってみせた。それから、また前に向き直る。ちょうど玄関まで来ていた。靴を履き、外に出る。
頭のなかで、一つの疑問が沸々と沸き上がってきた。それを解消するには、ユキに聞くのが一番だった。しかしその上、オルタさんには、できる限り聞かれたくなかった。聞かれてもよかったが、どこか決まりが悪かった。
「なぁユキ」
「なんですか?」
小声で話しかけた俺に合わせて、ユキも小声になった。
「お前って、いつ頃オルタさんと知り合ったんだ?」
「いつ頃……。そう聞かれると、いつ頃からですかね」
覚えていない、という感じではないらしい。物心ついたときからそばにいたから、詳しくはわからないという。その頃から親しかったから、今は呼び捨てにするくらいの仲になっているのだろうか。
「ユキとオルタさんって、どういう関係なんだ?」
「オルタとの関係? うーん、多分それは」
「ついたよ」
オルタさんの声を聞いて、俺達は立ち止まった。
オルタさんはすーっとこっちに目を向けると、クスッと少し笑った。
「ここ開けるけど、話はいいかい?」
どうやら、聞こえてしまっていたようだ。目を向けて「はい」というと、「そんな顔しなくていいよ。俺とハクはただの友達だよ」と軽く言ってくれた。気まずさが顔に出てしまっていただろうか。
そんなこんなで、俺達は転送部屋の前に到着した。