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仮面と旅する別世界  作者: 楸 椿榎
療養編
59/123

番外片 『小さな体の大きな愛』

これは、冬が”願世”に来る、ずっと前の話である。

リツォンコーネ大陸の、とある丘。


「ふ~ふふ~ん♪ ふふんふ~ふ~ふ~ん♪」


 空って綺麗だなあ。どこまでも青い青い。

 雲って不思議だなあ。ふわっとしてて、小さくて、大きくて。あったり、なかったりして。


「お嬢ちゃん、そこで何やってんだい?」


 ん? 後ろから知らない人の声がする。

 あ、きっとこのおじさんの声だ。ここらへんじゃ見かけない、変わったヒラヒラの服着てる。おじさんの後ろにいるのは……動物? おっきな鳥さんや、猫さんやウサギさんや、他にもいっぱいいる。


「ああ、こいつらか? 俺の家族みたいなもんだ」


 家族。家族なんだ。皆。


「お嬢ちゃん、何やって……っておいおい、近づいたら危ねえぞ」


 この狼みたいな子。フサフサしてて気持ちいい。可愛いなあ。


「フシュゥ」

「……ランクが懐いてやがる。こりゃすごいな」

「らんく?」

「そいつの名前だよ。普通は人を寄せ付けないんだが、お嬢ちゃんは別みたいだ」


 ランクは「人をよせつけない」んだ。よく分かんないけど。


「ふ~ん、ラーンクー♪」


 ランクをフサフサしてたら、他の皆も集まってきちゃった。


「クルルゥ」

「ウルゥ」

「キュ」

「グルゥ」


 えへへ。みんなグリグリしてくる。


「皆も、可愛いよ♪」


 皆可愛い。可愛い。


「こりゃあ参ったねえ。皆この子のこと、好きになっちまったのか...」


 む。


「この子じゃないもん!」

「ん? ……ああ、悪かったな。お嬢ちゃん、名前は?」


 あっ。私……。


「名前……」

「……そっか、名前が、ないのか」


 おじさんはしゃがんで、私の頭をくしゃくしゃ撫でた。


「じゃあ、(かえで)ってのはどうだ?」

「かえで?」

「そう、楓。秋になると綺麗に色づく葉をもつ木の名前だ」

「かえで……。うん、楓! 私、楓!」

「えらく気に入ったようで、嬉しいねぇ」

「おじさんの名前は?」


 聞いてみると、おじさんは「うぐ」って言いながら笑った。


「俺、まだ結構若いんだけどなぁ。まぁそこはいいか。俺は(もみじ)って名前だ」

「もみじ……。よろしくね! 椛!」

「ああ、よろしくな」


 これが、私と椛の、最初の出会いだった。

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