幕間 『一方そのころ』
暗い一室。光源はカタカタと硬質な音を立てる一つの電子機器のみ。その光を反射する四角い眼鏡は、後ろからのノックの音で微かに動いた。しかし、指の動きは止まることを知らない。
重々しく開かれた鉄扉の奥からの照明の光が、広々とした部屋の一部を照らした。
「調子はどうだ? ベル」
手を休めず作業をこなす短髪の少年に向かって、緑髪の男が近寄っていく。
画面をのぞき込んだりはせずに、傍らに座る。
「今のところ順調だ、国王。この分なら、試作品は明日にでも実地試験に持っていける」
少年からの抑揚のない報告は、男の顔をほころばせた。
「おお、本当か。それはよかった」
部屋の奥をじっと見つめながら、男は呟く。
「すまないな、お前に頼りっぱなしになってしまって」
少年は表情一つ変えず、無機質に返す。
「そんなことはない。これが俺の役割なだけだ。国王は、国王の役割を果たせ」
傍から見れば不敬とも言えるであろうその態度に、男はぷっと噴き出した。
「そうだな。それもそうだ。お前が気兼ねなく作業できるように、俺は俺の仕事をするかね」
「ああ、だからこんなところで油を売っていないで、すぐに執務室に戻れ、国王」
はいはいと軽く返事をすると、男は腰を上げ、静かに扉を閉めて出ていった。
「…………」
部屋の中には、またカタカタと硬質な音が響くのみ。