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仮面と旅する別世界  作者: 楸 椿榎
第一章 変動編
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第三十六片 『古い魔法陣』

 謁見部屋に行く途中、廊下でばったりハハルさんと会った。

「あなたたち、靴を持ってくるの忘れてるでしょ?」

「あっ」

 ユキの間抜けな声が空気に消える。

 何だ? 転送という移動方法では、靴を自分で持っておかないといけないのか。

「冬君の顔を見るに、国王は説明をしていないみたいだね」

「そういえば、「後で」って言った直後にメネスさんが入ってきて、そのまま話の流れで解散になっちゃいましたね」

「そっか。なら、今回は仕方ないね」

 次からは忘れないでねと言いながら、ハハルさんは長い羽織の下から俺とユキの靴を出した。

「ありがとうございます、ハハルさん」

「いやいや、いいよ。行き違いにならなくてよかった」

 そのまま、俺たちは一緒に謁見部屋へと歩を進めた。


「来たね、三人とも」

 部屋に入ってみると、レジルさんは既に座っていた。

 それから、部屋の中央当たりに何かが広げられている。

 布であろうか。大きさは二メートル四方ほど。少し茶色がかっているように見える。

「まあ入りなさい。転送の説明がまだだったからね」

「国王、そこはちゃんとしてください。危うくこの二人、靴忘れるところだったんですから」

 すまんすまんと謝る国王様の前に進んでいく。

 茶けた布を挟んで国王様と対面する。

「転送というのは、魔法陣を使って特定の位置に瞬間移動するという移動方法だ」

 ファンタジー作品でよく見るあれか。

「この布に描かれた魔法陣は、ファラスの転送所に繋がっている。先にハハルにやってもらうから、よく見ておくように」

「はい」

「ハハル、頼む」

 呼ばれて、ハハルさんが進み出た。布の上、魔法陣の中心で立ち止まる。

「中心についたら、下の布に向かって魔力を流していくのよ」

 言いながら、おそらくハハルさんが布に魔力を流し込んでいるのだろう、黒い線で描かれた魔法陣が、足元から緑色に光り出した。線をなぞるように緑の光は広がっていき、魔法陣を完成させるとその光は一段と強くなった。

「魔法陣に魔力が行き渡っても、一定量を流し続けて。そうしていると」

 光の色が、緑から白に変わった。

「ここからは一瞬だ。体が目的地に転送される」

 ハハルさんの体が、見る見るうちに光に包まれていく。

 そして。


――――――シュンッ


 光の残滓を残して、ハハルさんの体は視界から消えた。

「次は冬君だ。やってみたまえ」

「はい」

 つばを飲み込んで、立ち上がる。

 靴を片手に持って進み、陣の中心で止まった。

 目を閉じ、集中する。

 足の裏から、魔力を出す。

 跳ぶ時のように一瞬で爆発的に出すのではなく、ゆっくりと、少しずつ。

「おお、流石だね」

 レジルさんが声を漏らすが、俺にはほとんど聞こえてない。

 足の下に暖かな感触と光が感じられる。

 目を開いてみると、魔力が充填され、陣の色が変化するところだった。

「じゃあ、冬君」

 光に包まれていく視界の外で、レジルさんの声が聞こえる。

「行ってらっしゃい」

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