第三十三片 『同調』
決闘が終わり、俺たちは謁見部屋に戻ってきていた。
「ガルムたちに聞いていた通り、なかなか強くなってきたね、冬君」
「それほどでも」
本当に、あの強さを見せつけられると、俺なんてそれほどでもないと感じてしまう。
「こちらに来てから日も浅いのに、あそこまでできるのはすごいと思うよ」
「……はい」
「ハクとの同調率も、結構高いみたいだしね」
……ん?
「同調率?」
何だそれは? 聞いたことがない言葉だ。
「そうか、そういえば言ってなかったね」
レジルさんは一本指を立てて話し始めた。
「同調率というのは、“面族”と、契約人との親和率を表すものだよ。それが高いほど、二人は強い力を引き出せる。おそらくさっきの連射も、同調率の高さがあったからこそ成功した技だろう。あんな使い方、普通ありえないからね」
「そうなんですか」
ここにきて、“面族”の話が真実になったな。
つまり、契約を交わした直後はそれほど強くないが、同調率が高くなっていくうちに強くなる、と。
「これなら、あの任務を任せてもよさそうだ」
レジルさんの口から、気になる言葉が出てきた。
「あの任務?」
「そう、君の実力を確かめた理由の一つでもある」
……。
「そういうことは、先に言ってくれませんかね?」
「先に言ったら、何かしらの手加減をされるかもしれないだろう?」
口角を上げるレジルさんは実に楽しそうに見えた。
俺が言いたかったのは、心構えができないじゃないかって話だったのだが。
まあそういう懸念をするのも納得できるからこそ、反論できない。
「まだ昼前。時間もあるし、この流れで任務についてもらおうと思う」
レジルさんは耳に手を当て、何かぶつぶつと話し出した。
時折ジェスチャーを交えているが、通話相手に見えているのだろうか?
何だか日本人みたいだな。
「同行者にも、ここに来るように伝えた。それまで、任務の概要を説明しよう」
レジルさんの目が真剣みを帯びたのを見て、俺とユキの背筋が一層伸びた。
今回の任務がこれまでとは違うものになると、直感した。