第三十片 『決闘』
あれからハハルさんと町に行き、任務は数日で無事に終わった。
また俺たちは、レジルさんに呼び出しを受けていた。
お決まりの謁見部屋で待つ。
もうそろそろ、俺がこっちに来始めて二週間くらいか。
そんなことを考えていると、「待たせたね」と言ってレジルさんが謁見部屋に入ってきた。
「今日は、ちょっと予定を変更するよ」
座って早々、レジルさんはそんなことを言った。
「冬君には、南西の町での討伐任務を与えようと思ってたんだけど、今回の同行者がちょっとね……、都合がついたらまた別任務をやってもらうから」
都合が急につかなくなった? 一体何があったんだろうか。
……もしかしたら、今日のタッグを組むのは、あの人だったのかもしれない。
まあ、それはそれとして。
「じゃあ、今日は何を?」
「……俺と決闘しよう」
…………。
「本気ですか?」
「ガルム、そしてハハルから、ある程度はできていると聞いているからね。この二週間ほどでどこまでいっているのか、私の目でも確かめておきたい」
活動的な王様ですね。
「さあ、行こう」
跳ね橋を渡ってまっすぐ五百メートルほど進んだところ。大平原の真っ只中。
俺は白雪を装備して、十メートルほど離れた位置にいるレジルさんと対峙していた。
俺の手には魔銃が、レジルさんの手には長柄の槍が握られている。
緑を基調とした柄には、端から刃の付け根まで銀色の線が一本だけまっすぐに延びている。
レジルさんの両手によって軽々と振り回されるその槍が、何故か只物ではないように思えた。
と、準備運動が終わったのか、槍の端を地面に突き刺して、レジルさんは口を開いた。
「勝利条件は簡単だ。相手に一撃でも攻撃を当てられれば勝ち」
「それでいいんですか?」
「いいとも。そして、俺は十分の間、自分からは攻撃しない」
それだけの自信があるということか。流石は一大陸を治める王。
まあ、俺みたいな奴にそれだけのハンデを与えてでも負けてしまったら面目丸潰れであろう。
「それでは、はじめ!」
じゃあ最初から遠慮なく。
まず一撃、放つ!
引き金を引くと、発砲音と共に銃口から薄青色の魔力の塊が打ち出された。
目にもとまらぬ速さで空を切っていく。
「おっと」
レジルさんは軽く驚きながら槍を引き抜き、銃弾を軽々と柄で弾いた。
方向を変えられた銃弾は、地面に深くめり込んだ。
「開始早々撃ってくるとは、中々だね」
「……」
「さあ、もっと来なさい」
レジルさんは余裕しゃくしゃくといった様子。
なら、先のハハルさんとの任務で習得したこの技を見せてやる。
「白雪、二倍だ」
「はい」
引き金を、引く!
「ん。これは……」
弾かれた弾は、先ほどよりも深く地面に沈んでいった。