第二十六片 『魔女』
休日、もとい修練日、の翌日。
俺とユキは、またあの謁見部屋に来ていた。今日からまた任務が始まる。今度はどこに行くのだろうか。
「今日は、東の警護に当たってもらいたい」
王都から東に百三十キロ。そこには砂漠が広がっており、オアシスを中心として、ラカンという町が形成されているらしい。
町の近くに生息しているのは爬虫類、とくにトカゲのような魔物、そして尻尾に棘を持ったサソリのような魔物だという。数が増えると共に生息地域も広がり、その中に町が含まれてしまったという話だ。
「分かりました」
「それで、今日はどなたが?」
俺とユキの質問を受けて、レジルさんは手を二度叩いた。すると。
「国王様、時間ですか?」
以前、蓮が飛び出してきた部屋の引き戸がゆっくりと開かれた。姿を現したのは、正座をした一人の女性だった。
「彼女が今回の同行人である、ハハル・リンクだ」
「紹介にあずかりました、ハハルです」
こちらに向きを正して丁寧に下げられた頭に、慌てて俺も礼をする。
格好としては、かなり不思議な感じだ。
他の人が和風である中、彼女の服には洋の風情を感じる。
紫を基調とした服装。若干楕円になっている丸眼鏡。紺色の髪は首元まで届くくらい。
ズボンは蓮と同じく動きやすそうな肌密着のテイパードタイプ。
上は袂が他よりも少し大きくなっている。
ここまでは差異の範囲内ともいえるが、決定的に違うのは羽織だ。
他の人と違い、襟部分がフードになっている。そして左右で白抜きにされている魔法陣のような円形の紋章。ボタンも比較的大きく、幅も長さあるため、それ単体で体全体を覆い隠せそうなほどだ。
加えて、横に置かれたとんがり帽子。
これらの情報から導き出される答えは……。
「もしかして、魔術師ですか?」
「あら、詳しいのね」
詳しくなくてもその身なりを見れば誰でも一発で分かる。
「まあ、あれだ」
レジルさんの声に、顔が向く。
「今回は数日がかりでの行き来になるだろう。気を付けてくれたまえ」
その言葉を最後に、俺たちは謁見部屋を出た。