120/123
第百五片 もうひとつの武器を
「うっ……ぅう……」
「もう大丈夫だ。蓮。これでもう、暴れなくて済む」
「……ありがとな。ありがとな、冬」
蓮はそのまま涙を流しながら気を失った。
蓮をそっと寝かし、春の方へと駆けよる。
「大丈夫か、春?」
「いや、多分骨を何本かやられた。剣すら握れない」
回復魔術をかけてみたが、ここまでの痛手を治せるほどの術を覚えてはいなかった。
「冬、それを持っていけ」
春が視線で指し示したのは、春の武器である黒剣だった。
「重さはほぼない。左手でも十分使えるだろう」
持ってみると、確かに軽かった。
「でも、これは」
「武器は多い方が選択肢が広がる。それに、剣は教えただろう」
「……ああ」
確かに、ないよりは何かできるかもしれない。
一応帯刀して、先に進むことにした。
―――*―――*―――*―――*―――
頂上に出ると、重力場は大陸の方向に戻った。
「清水、やっと来たか」
上には、野薪先生が立っていた。
「さて、それじゃあお前への最終授業を始めようか」