第百一片 不思議な女の子
どうにかムー大陸近くまで到着すると、突然、重力場が逆転した。
地面に落ちる前に体勢を立て直し、無事着地する。
ハハルさん、メネスさん、ガルムさん、春、蓮、それぞれが大陸に降り立った。
レジルさん達が戦っているのが頭上に見える。
「この塔を上るのね」
目の前には、高く高く続く塔がそびえ立っている。
その先端はここからでは確認できない。
「これ、飛んでいけば良くないか?」
「それは許さない」
「っ!」
メネスさんの提案を払いのけた声の方向に銃口を向けた。
そこにいたのは、苔むした岩に座る少女だった。
俺たちに、別段敵意を向けているわけではないらしい。
「……君は?」
「私の名は、アウン。本当の名前は、ヤヤナヘというらしい」
「本当の?」
「この岩を守るのに協力している男が、これから塔を外側から登ろうとするやつは岩も攻撃してくると言っていた」
つまり、俺たちがその手段をとれなくさせようとしてるのか。
「それが嘘だとは思わないの?」
「嘘だろうが嘘でなかろうが、ここに見知らぬ奴が来ること自体危険だ。そのうえで奴の言うとおりにするなら、そいつは排除した方がいいだろう」
最初から高確率、外から登ろうとしたら確定。……なるほど。
「なら、俺たちが普通に塔に入っていったら?」
「それは何も言われていない。お前たちが私に危害を加えないなら、戦う理由もない」
なら外側から登る時もそうじゃないのか……。まあいいか。時間が惜しい。
「俺たちは君に危害を加えるつもりはない。それと、塔へは普通に入る。これでいい?」
「許しを請うとは変な奴だ」
「じゃあね」
不思議な少女との会話を済ませ、俺たちは塔の中へと足を進めた。