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仮面と旅する別世界  作者: 楸 椿榎
現世侵攻編
113/123

第九十八片 宣戦布告

「世界中の人々へ。この通信は聞こえていますか? おそらく、それぞれが判別可能な言語になっているはずです」


 空中に映し出された先生の巨大ホログラムは、手話のような身振り手振りを交えながら言葉を紡いだ。


「空に大きな穴が開いて、不安になっている人も多いと思いますが、大多数の人は、気にする必要はありません。私たちが標的とするのは、腐った人間たちです」


 『標的』という強い言葉に、一瞬鳥肌が立った。


「皆さん、平和って好きですよね、安定した生活って好きですよね。先進国の人々はもちろん、他の国々でも望んでいる人はいます。しかし、それらは易々と手に入らない。

 なぜか? それを妨げる、そうならない方がいい連中がいるからです。

 戦争、犯罪、虐待、差別、汚職、貧困、などなど……。無くなった方がいいと訴え続ける人が大多数を占めるはずで、今までだってさんざん色々な人が色々なことを行なってきた。

 でも、なくならなかった。

 なぜか? 言葉だけでは、世界が変わることはないからだ。所詮この世は弱肉強食。強い者こそが勝利する、自然の摂理の中。

 だからこそ、俺はすべての上に立つ。全てをこちらで管理・統制し、間違いを正すことに全力を注ぐ。

 そのために、まずは邪魔なやつらを排除していく。

 勘違いしてほしくないのは、これから行うことは『一般的に暮らしている人々』には関係ないという事だ。おそらく皆さんがゲームの中でしか見たことがないような生物がこれからそちらの近くに向かうだろうが、そちらが攻撃を仕掛けてこなければ、標的以外には攻撃しないよう教えてあるから、自衛隊や各国の軍隊は、『間違った人たちを守る』意思がないのなら、これから数日の間、武器を持たず、彼らに攻撃しないことだ。それさえ守れば、あなたたちにはちゃんとした『これから』が待っている。外出は、備蓄があるなら避けた方がいい。踏みつぶされない保証は、私でも出来かねる。

 さあ、話が長くなったが、これから『間違った人たち』を殺す。魔物が出るが、先に言ったように何もしないことだ。

 あと、レジル達に最後に忠告を。君たちはここに乗り込んでくるつもりだろうが、その場合、こちらは殺すつもりで対処させてもらう。そこのところを、ちゃんと認識しておいてくれ。

 それでは、良き明日が訪れることを願う」


 最後の言葉を言い終わると、ホログラムは霧散していった。

 同時に、ムー大陸を覆っていたモヤが一斉に四方八方に散っていった。あれが魔物たちなのだろう。


「皆」


 レジルさんの呼びかけに、みんなの視線が集まった。


「クロアが行おうとしているのは、この世界への侵攻だ。願世の者が現世に影響を与えることは、色々な面で問題が起きる。

 俺たちは、地上へ向かう魔物の掃討とムー大陸への突入を行う。掃討はオルタ・フレア・椛と俺でやる。

 完全同調ができる三人と俺は自力で、クエード君はそのジェット戦闘機で、他は椛の魔物に乗ってくれ。マヤさんは、爺ちゃんたちを助けてくれ。おそらく魔物が俺たちの網をすり抜けて飛来してきたとき、戦力が必要だ」

「了解した」

「それじゃあ、待っている時間もない。すぐに飛ぶぞ」


 レジルさんの柏手一つで、みんなが一斉に動き出した。

 ユキを呼ぼうとした俺に、レジルさんが近づいてくる。


「冬、本当は、お前を連れて行きたくはないが、……」

「死ぬかもしれない。でも、それは今までも同じだった。そこに何度も俺を送り込んだのはレジルさんでしょ」

「今回は危険度が高いんだ。それに」

「俺だって怖いよ。でも、あの人を止められる可能性がある力がある人は限られてる。俺は、勝てる可能性を少しでも上げたい」

「……」

「行こう」

「……そうだな、俺が悪かった。準備ができたら飛んでくれ。なるべく一人にならず、他のメンバーと最低でもツーマンセルで動け」

「わかった」


 レジルさんはそう言うと、いち早く髪の色を変え、空に飛んでいった。


「行くぞ、白雪」

「はい、冬さん」


 初めから完全同調で行く。


「冬、準備は出来たか」

「行くぞ! ほらほら!」

「ああ」


 他の二人と共に、俺も空へと飛び出した。

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