第九十三片 王からの誘い
「あれ?」
それぞれの力を確認しあい、王城に戻ると、そこにレジルさんの姿はなかった。
「どこ行ったんだ? レジルさん」
「トイレじゃね?」
「いや、あれ見ろ」
「「ん?」」
春が指差した先、レジルさんがいつも座っている座布団に、何かが置かれている。
「これは、手紙?」
というかメモだ。
『裏の滝まで来てくれ』
裏の滝?
「あ、いつも通してくれなかったところだ」
「ユキ、知ってるのか?」
「はい、子供の頃から、大体町のどこを走り回ってもよかったんですが、あそこだけは絶対行かせてくれませんでした」
「へぇ」
そんなに危険な場所なのだろうか?
「とりあえず、そこに行こう」
───*───*───
町の裏手。こんな場所があったのかというくらい分かりづらいところに入り口はあった。
兵士さんが待ち構えていたが、用件を話すとあっけなく通してくれた。
緑豊かな岩と土の道を抜けると、一段と開けた場所に出た。
奥には小さくも雄々しく流れる滝と、緑色の服を着たあの人が。
「レジルさん」
「ようやく来たか」
振り向くレジルさん。
ん? 泣いてたのか?
「どうした?」
「あ、いえ。なんでも」
「そうか」
一度咳をするレジルさん。
俺たちを見回し、頷く。
「今日君たちをここに呼んだのは、一つの詰めを仕上げるためだ」
「詰め?」
「あぁ」
「君たちと面族との同調。その詰めだ」