第九十二片 力試し
「さて、着いたぜ現世の野郎共!」
「蓮、口悪いよ」
「今に始まったことじゃないだろ?」
「冬、それどういう意味?」
蓮に睨まれているのは置いといて、俺たちは森の脇の広場に来ていた。
「それじゃ、早速やるか?」
「焦るな。まず確認させろ」
「そうだな。白雪」
「はいっ」
「夜桜」
「ええ」
「閑古鳥!」
「ん」
木の葉が舞う。
風を絶つのは鎌と刀。
俺たちの銃は……。
「これは!?」
『うわわっ!?』
俺の銃は、持ち手とトリガー以外がドロドロのスライムとなって腕にへばりついてきた。
「どうなってんだ、これ!」
「冬、落ち着け」
「そうだぞ冬!」
「気持ち悪~」
どうしてこうなった? もしかして、これが新しい能力?
『冬さん、いつもの銃をイメージしてみてください!』
『いつもの? えっと……』
目を瞑り、これまで使ってきたあの銃を、想像する。
腕にまとわりつくものの感覚が削げていく。
目を開けると、そこにはいつもと変わらない銃が出来上がっていた。
『他に思い付く銃ってありますか?』
『他に?』
P90、対物ライフル、ワルサーppk/sくらいか。
と、また銃が形を失う。
『あぁ! 一つずつです! 一つずつ!』
『わ、わかった!』
一つずつ、想像していくと、銃の形はイメージに沿って変わっていった。
正確な形ではないが、想像に近い銃が作り出されていく。
『これは……まさか』
『はい、これが今回の強化のようです』
つまり、想像の形に銃を変える力、か。想像力があれば使えそうだが、しかしこれはかなり難儀な力だな。
『どうにか、私がイメージを保持できるようにしてみます』
『できるのか? そんなことが』
『ちょっと今の三パターンで試してみたんですが、冬さんのイメージを私の中に置いておけば、どうにかなりそうです』
『なんか悪いな』
『いえ、私にできるのは補助なので、できることが増えて嬉しいです!』
白雪……、ありがとう。
さて、春の方は。
「これは、中々……いい」
「おぉ、腕と剣がいっぱいだ!」
「気色悪っ!」
春の影は俺たちの数倍大きく広がり、その中からは、幾本もの剣を携えた骨の腕が伸びていた。
今までは剣一本を分離使用、腕一本を援護として出すので精一杯だったのに。
分かりやすい能力向上だな。
と、うずうずしていたあいつがそんなものを見てじっとしていられるはずもなく。
「強度の方はいかがなものかな!」
「おい、中籠!」
「……っ!」
春に向かって跳びかかり、超上段から鎌を振り下ろした!
「おっ!?」
影の剣全てが重なり、中籠の鎌をがっちり受け止めた。ギリギリと金属同士の擦れる音がする。
「ふんっ!」
「うぉっと」
ついには中籠の方が押し返された。
危なげなく着地した暴れん坊は、この結果に目を輝かせた。
「すっげー! すっげーすっげー!」
「お前は少年か」
「冬に同意」
「うるせぇよ、そんなもん見せつけられたら燃えるだろ!」
「……」
中籠のやる気が今までで一番大きくなっているのがその態度で分かった。
……これは、長くなりそうだ。
「さぁ、ガンガン試合しようぜ!」