第九十片 第三錬石
王城。謁見の間。
いつものように俺とユキの前にはレジルさんが。
でも少し違うのは、俺たちの両脇に二人ずつ座ってるってところだ。
「中までゴリゴリの和建築かぁ。すげぇなぁ」
「少しは落ち着いたらどうだ」
「春、」
「あぁ、サクラさん、いいですよ。亮が落ち着いてないのはほんとのことだから」
「こほん」とレジルさんが一つ咳をすると、四人は口をつぐんだ。
「まず、春君と亮君に確認しときたいことがある」
「確認?」
「あぁ。春君はおそらく持っているだろうが、亮君、君は第三錬石を持っているかい?」
「第三錬石?」
頭を傾ける中籠に、春は懐から眼鏡ケースのような白い箱を取り出した。
中に入っているのは、くすんだ黒色の、細長い石。
「それが、錬石?」
春の手元を指差す中籠の言葉に、俺は少し違和感を覚えた。
「お前、錬石って聞いたことないのか?」
「え? そうだけど」
「お前の大鎌って、もとはこのくらいの石じゃなかったか?」
俺が両手で概形を示してやると「あぁ、あれか!」と納得したように手を叩いた。リアクションが古い。
「コトリ、あれ以外の石って、錬石だったのか?」
「いや、僕らが使ってきたのは、全てただの魔石。錬石ではないよ」
「そうなのか」
「それに、僕は第一以外の錬石は無くしちゃってね」
「とのことらしい」
「そうか」
レジルさんは一度間をおいてから、「まぁいいだろう」と話を流した。
「冬君、何をしてほしいか、わかるね?」
「前と同じように、錬成に行くんですか?」
「そうだ。そしてその能力を今日一日を使って体感し、また戻ってきてほしい」
「了解です」
「能力を試すときは、城の前にいる蓮に声をかけるといい。演習場に連れていってくれるはずだ」
「わかりました」
レジルさんから第三錬石を受け取り、俺たちは『かじや』に向かった。