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仮面と旅する別世界  作者: 楸 椿榎
ラスフロス編
101/123

第八十八片 残存

 船は一度、ムー大陸の港に寄り、ムーの要人たちを降ろした。

 ここに着くまで、俺は一度も船内で野薪先生と遭遇しなかった。少し話をしたかったが、仕方がない。


 ムーの港は、石造りの建物が多かった。というより、遺跡のような場所にそのまま人が住み着いたようにも見えた。色を失った壁と、そこに生えているつたこけがそう思わせるのだろうか。


 港町のすぐ近くまで森が続いていて、ずっと先には、とてもとても高い建造物が見えた。

 モルフェディアでも同じようなものを見たが、あれはガラス的な材質だった。対してこちらの塔は他と同じく石造り。加えて高さは空に浮かぶ雲よりもかなり高い。


 どうやって造り上げられたのか、魔術や魔法を用いてもあんなものが建てられるのか。

 それとも、こちらのムー大陸でも、人智を越えた何かがあるのか。

 すべては謎だった。

 

 備品補充などを済ませると、船はすぐさま出港した。

 

 一週間もすると、船はアストリアに到着した。

 港にはもう一隻の船が用意されており、モルフェディア陣とリツォンコーネ陣はそれぞれに分かれて、別々に帰っていった。


 ……のだが。


「何で中籠たちも春たちもここにいんの?」

「何故って」

「それは」

「そういう定め」

「だから」

「です?」

「ユキまで疑問形で参加しなくていい。というか本当になんでなの?」


 四人はさも当然のごとく、このアストリアに降り、二つの軍艦のどちらにも乗り込まなかった。

 行く宛のない中籠はまだ分かるとして、春が残る意味が見いだせない。


「あぁ、すまない冬君。彼らを呼び止めたのは私なんだ」

「レジルさん」

「そうそう」

「俺たち呼び止められた」


 水を得た魚のように、中籠とコトリは俺に向かって「そうだそうだ」とか言い出した。

 春とサクラは黙って頷いている。


「まぁそういうわけだから」

「……分かりました」


 理由説明が終わると、レジルさんはハハルさんたちの方へと歩いていった。


「俺たちも行こうぜ」

「そうだね」


 中籠とコトリが駆けていく。


「行こうか、春」

「あぁ」


 サクラと春が歩き出す。


「行きましょ、冬さん」

「……あぁ」


 流れに流されるように、俺は皆のあとについていった。

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