瓶底眼鏡
シンディの視点です。
r15です。
苦手な方スルーをお願いします。
吐息が一つ喉元に感じる。
重い。
それに胸を弄られている。
体が震えているのは怒りのせいだ。断じて感じているからではない。
「こんの、生臭坊主!」
思いっきりベッドから突き落としてやった。
ごつん。
頭がぶつかったような音がした。
「つー、痛いなぁ。」
アリが体を起こしながらボヤく。
「朝っぱらから発情してんじゃないわよ。」
頬杖をつきながらアリを見下ろす。
「しょうがないだろう?この頃時間が合わなくて溜まってたんだから。」
「だから、なんで更に忙しくなってるのよ?いつか体壊すわよ?」
「いや、忙しくはないし、無理してもないよ。すごく楽しんでるから。」
「あ、そう。」
ついッと視線を逸らすとアリがベッドへ登ってきた。
「嫉妬?」
アリが後ろから私を抱きしめる。
もうじき日が出てくる時間で、肌寒く感じていたのでちょうど良い。
「何に時間を使ってるわけ?進展はないんでしょ?」
「男で魔法の勉強会だよ。ブリテンのアーサーとマーリン、ドリオスのハブルだ。」
「凄いメンツね…。またどうして?」
「アグニの思し召しさ。」
「なるほどね。」
アリは私の後ろから首に顔を埋めてきた。人間湯たんぽね。
「で?進展は?」
「ない。」
「その勉強会とやらで収穫はないの?」
「まだ応用まではいってないから。」
アリは私の首を舐めてきた。
猫か。
「それに、彼処にきな臭い話を持ち込みたくないんだよな。」
「あら?あなたらしくないじゃない。」
不思議に思って後ろを振り向こうとすると唇を塞がれた。
息が漏れる。
長いこと絡め取られ、やっと離してもらえた。
恨みがましくアリを睨む。
「俺はなんだかんだで君ほど割り切れてないんだよ。」
アリは少し寂しげに話していた。
「あら、だったら先ずは、割り切って禁欲したらどう?」
「それとこれとは別」
アリはまた唇を塞いできた。
私の体をアリの方へ向かせて、キスをしながら首から徐々に下へと撫でていく。
胸を触られてつい声が漏れてしまう。
快感に委ねてアリの首に腕を回す。
「で、クスリスの方はどうなんだ?」
「あ、相変わらずリザとネヴィがアーサーに近づいているわ。」
「目的はわかったのか?」
「其々、国を挙げての目的はないという結論になったの。でもリザの場合は後継者争いの戦略としてブリテンを狙ってる可能性が高いわ。ネヴィの方はまだ情報収集中。んっ」
アリは隙を見てはキスをして、片手で私の胸を揉みながら、もう一方で下腹部を撫でてくる。
「でも、リザの場合ブリテンを狙っても旨味はないだろう?むしろタリト共和国を狙った方がいいんじゃないか?」
アリは口を話すが手はそのままだ。
「あ、その意見も出たわ。ブリテンよりタリト共和国を攻め落とす方がずっと簡単だもの。ん、でも、リザの国政上タリト共和国の皇族を解体しなければならないでしょう?それだとタリト国民が暴徒化するわ。タリトの旨味はあの高い技術を有する人材、全ておじゃんになる。」
「そんな忠誠心があるとは思えないけどな…。自国の文化や思想に関係なく他国のものを吸収するような国民性じゃないか。」
「皇族という自国のアイデンティティーがあるから好き勝手できるという考え方もあるわ。あと、タリトの場合、吸収ではなくて代謝って言った方が正しい。」
「何が違うんだ?」
「吸収だとその文化や思想そのままに取り入れるだけで、ある意味リタの同化と変わりない。でもタリトの場合、自国の根本を元にして作り変えているのよ。」
「随分器用なんだな。」
「そうかしら。多分、その揺らぎやすいアイデンティティーを貫く為の裏返しとして、閉鎖的で、自分から世界に介入する事はないのよ。」
「なるほどな。…だから海外に行くタリト人はビクビクしてるし、タリトの外交官も媚びへつらいが多いんだな。」
なるほどなるほどと呟きながら、お腹を撫でていたアリの手は下半身へと向かっていく。
「リザもネヴィもただ単にアーサーが好きだという考えはでなかったのか?」
「それは流石にでなかっ」
アリは力強く唇を塞いできた。
アリの首に回していた腕を更に強く巻き付けてしまう。
胸をアリに押し付ける形となってしまった。
「その可能性もいれて、おいた方がいいかもな。」
「ど、どう…して?」
「生き物って、合理性だけでは片付けられないからだよ。」
アリは私の口内に侵入してきた。
じわりとくる快感に腕を緩めた。
「スコーラはリタで動きをみせていない?」
私は耐え切れなくならないように、キスを打ち切ってアリに質問をぶつける。
「様子を伺わせているけど、未だ繋がりは殆どないようだ。」
少しは気を逸せたようだ。
と、安心していると、アリはまた私の口を絡め取ってくる。
声にならなかった。
「今はブリテンやドリオスで動いているんじゃないかと考えてる。」
アリの声が遠い。
「スコーラは守りが厚いからな。時間が掛かるとは思うけどまぁ気長に…。」
「でも、やっぱり…はぁ、スコーラの動きはここで見た方が絶対早い。何とかして侵入経路を探すよ。」
「はぁ、…ええ、…そうね。」
二人で息を整える。
私はアリの頭を撫でていく。
「ねぇ、スコーラの監視を抜ける方法なんだけど…。」
私はアリの首元にもう一度腕を巻き付けた。
じっとアリの目を見つめる。
「な、なんだよ?」
「ハル・デュークって覚えてるでしょ?」
「…。」
巻き付けた首の皮を少しつねる。
「あ、ああ。」
「彼の出身がわかったわ。あの暗黙の島よ。」
「それが?」
「ハル・デュークの相貌は黒髪に黒い瞳。」
「マーリンもそうだろ?何が言いたい?」
「まだあるの。あの瓶底眼鏡。」
「……?」
「文献に載ってるイグノ族の族長と全く一緒なのよ。」




