条件
アーサー視点です
ハルはこんなに自己主張するような奴だったか?
マーリンはこんなにすぐ心を開いたことがあったか?
いや、二人の口論は面白い。面白いが…
「だから、ランバノ…、ではなくてアレンとマルクスといったか?何故私が君達にそんな面倒なことをしなきゃいけないんだ?」
「何度も言ってるだろう?アタラクシアというのに、お前は頭がないのか?姉さんが言うんだ。何か意味があるはずだ。」
「シビュラの言うことを鵜呑みにするばかりの君に頭の心配をされるとは。君もアレンという奴も疑う事を知ったらどうだろうか?」
「アレンじゃない、本当の名前はアーサー、私はマルクスではなくマーリンだ。アタラクシアの記憶は全て思い出したのだろう?姉さん…シビュラの発言の重要性は分かるはずだ」
「私はアタラクシアといっても君と同じハーフだからな。より繊細なんだ。」
ハルはワザとらしく溜息をつく。
どこまで本気で言っているのかわからない。
「君達に何か教える時間があるなら精神安定の時間として使いたい」
「自分で言っているなら世話ないな。姉さんも精神安定の時間として俺たちと時間を共にさせようとしたんじゃないか?な、アーサー?」
これだよ。
急に俺に振ってくる。
「え、えーと、わからな…」
「な、アーサーもこう言っている。」
「わからないと言おうとしていたようだぞ?アレン改めアーサー、正直に言ってくれ」
二人にジロリと見られる。
ああ、怖い。
昨日ハルが覆いを取ってくれたおかげで、今まで以上に二人から流れる不穏な空気がビシビシ伝わってくる。
誰だ?昨日楽しみだとか言った奴?
「えーと、そうだな。俺は…」
二人の視線を感じる。
「…双子の言いたい事はわからないけど、ハルからタオについて、この流れについて教わりたい。」
俺はハルを見据えた。
「ハルに覆いを取ってもらって、俺は今まで何も見えていなかったことがわかったんだ。だから、もっと世界を知りたい。ハル、どうか頼めないだろうか。」
頭を下げた。
マーリンも頭を下げたようだ。
しばらく時間が経った。
「…条件がある。」
マーリンと俺は少し頭を上げた。
「なんだ?」
「私も…世界を知りたいんだ。」
マーリンがキョトンとした顔をした。
「何を言っているんだ?アタラクシアだろう?十分じゃないか?」
ハルがマーリンを見据える。
「…十分じゃないから私がいるんだと、…私は、思うようにしている。」
言葉を違えないような話し方だった。ハルは下を見つめながら、言葉を探していた。
「アーサーの言葉から、思ったんだが…」
え、何かした?
「これから私がやらなければならない事に君達の考えがどこかで繋がっているのかもしれない…。」
ハルはマーリンと俺を見て頭を下げた。
「どうか、私に君達の考えを分けて欲しい。此方こそよろしくお願いする」
俺はしばし呆然とその様子を見ていた。
マーリンはすぐ様口火を切ったが…
「ハル、了解した。因みにイリアム人のアリという奴とドリオス人のハブルという奴もいるからな。よろしく頼むよ。」
ハルは頭を下げたまま硬直した。
ガチッと音がしたのだ、
「これで沢山学べるな。よかったな」
マーリンはハルに微笑んでいる。
黒いぞ。
ハルは慌てて顔を上げた。
「ま、ままま、待て。聞いてない。」
「聞かれてなかったしな。」
「君、分かっているんだろう?私が如何に人見知りか…。」
「そうだったか?」
「知っているから言わなかったんだろう?」
「分かっているじゃないか。」
「酷いぞ、あんまりだ。」
ん?人見知りなのか?
取り敢えず思ったことを聞いてみた。
「人見知りにしては、知りもしない奴の所をよくぶつかりにいくよな?」
「そ、それは受験の時だけだっただろう?」
「いやー、ハルを見ていると誰かしらとぶつかってるぞ?」
ハルは硬直する。
「結局ハルはエルフだから妖精墜ちでも何でもないんだよな。ってことは、素でやってるってことだよな?」
ハルは硬直する。
マーリンはニヤリと笑う。
「だ、そうだ。因みにアリはスコーラ内の学園全体に顔がきくし、ハブルはドリオスの後継者第二位の地位にある。」
よく調べたなぁ。
「ハル、お前自身の保身の為にも関わりは持っといた方が得だぞ。」
「……、わかった」
ハルは頭を垂れた。




