アルニオン
引き続きハルの中の不思議話です。
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大きな箱が立ち並んでいた。
沢山の人が往来する。
しかも色んな顔立ちの人間がいる。
私はそこを脇目も振らず目的の場所へ歩いていく。
着いた場所は沢山の機械が置かれていて白を基調にした部屋だった。
私は白衣を着て、熱情を押さえつけながら何やら箱を覗いている。
見ていたのは、沢山の白いツブツブだった。
○○○
形はほとんど同じだが所々異なる服を着ている若者がざわめきながら大きな箱へ向かっている。私はその中で本を読みながら歩いている。
箱の出入り口の前には、番号が並べられた大きな板があった。皆、自分の番号を探しては喜び合い、番号が見つからなければ悲しみ合っている。
○○○
何やら爆発したようだ。
崩壊する建物と逃げ回る人々の音。
焦り、悲しみ、怒り、形容できない程の多くの感情が混ざり合っている。
私は逃げ出したいが空腹で動けない。ただこれから行く場所を夢見ながら様子を他人事のように見ていた。
○○○
○○○
気が変になりそうだ。
「だろうな。これで適応ができないという意味が分かったか?」
ああ、多分以前だったら狂ってただろう。
「そうだな。」
ジンはこれをアニマから受け取ったのか?何故発狂しなかった?
「そもそもジンは鱗に乗れないからな。これは受け取れないよ。何を受け取ったのかは知らない」
君にも知らないことがあるんだな。
「それを言うか?また可愛いと言うぞ。」
それは嫌だ。
「これでも君のおかげで見れる範囲が広がったんだ」
そうなのか?
「以前は私と同じような鱗を持つ木や草、石くらいにしか乗せられなかったからな。人間に乗れたのは初めてだ。面白かったよ。」
これを見て面白いといえる余裕は私にはまだないな。どうして君は大丈夫なんだ?
「さっき言ったろう?迷わないからさ」
私だって流れであることは認識しているぞ。
「だが割り切れないだろう?」
まぁ
「そういうことだ。私は迷わない。自分を起点として、同じ鱗を持つものに廻れるんだ。今回人間に乗れた事は大きな収穫だろう」
そうなのか?
「そうさ。」
しかし、君はアタラクシアの記憶に加えて鱗にも乗れる。やはり何でも知っていそうだ。
「厳密な意味で知ることは出来ない。出来たらこの世界と関わることは出来ないよ」
よくわからないな。
「いや君は分かっているはずだ。絶対的な何かに追い縋って君は休みたいだけなんだろう?」
けど、
「分かっているはずだ。休んだら落ちていくだけだと」
だって、
「君は迷い続けなければいけない」
何になるんだ?
「記憶にあるだろう?一瞬の快楽が見出されたのを」
「目を見開け。大丈夫だ。君と私でハルシオン。なに、一瞬の幻さ。」
君のこと好きになることはあるのだろうか。
「乗っかった船だ。もう海へ出たよ」
………しょうがないな。彷徨い続けるか。
「良い旅になるだろう」
そうだな良い旅にしよう
何やら深い海の底から浮き上がってきた気がした。
目はまだ閉じている。
身体が目覚めてないが頭は目覚めている。
ここはどこだ?
『ハル、明日から魔法を教えてもらうからな。よろしく』
急にあのハーフエルフの声が脳内に響いた。
『は?』
『決定事項だ』
『それは決定と言わないだろう?』
『よろしく』
『おい、』
そのまま声は途絶えた。
私が動けないことを良いことに…。
動けるようになったら撤回してやる、そう心に決めてまた意識を埋めた。




