ハルシオン
ハルの中の話です。
不思議話です
全て溶け出している筈だ。
なのに、なぜ私は"ある"んだ?
「分かってるのだろう。」
…誰だ?
「それも分かってる筈」
だから誰だ。
「君だ」
私?
目の前に"私"が現れた。
本当に"私"だった。
じゃあ、私は何だ?
「だから、君も私も同じなんだって。同じ事を言わせるなよ。…けどまぁ、言うなれば私は“私”のアルフエイムってとこか。」
アルフエイム?
「そう。でもって、その場合君が“私”のアルニオン。迷える仔羊ちゃん」
アルニオン?
「合わせてハルシオン。結局は幻」
ハルシオン…私の名前…。
「ま、どうでもいい。言葉も結局は虚無だ。相手が自分だったら尚更。」
私も結局は虚無なのか?
「知らん。…しかし、やはりアルニオンだな。アタラクシアと人間の混血は面白い」
自分のことだろう?
「私はアタラクシアの記憶を持っているから、それと比べられるんだ。…君とは違ってね」
それはズルくないか?
バカを見ているみたいだ。
「人間はいつだってそうだろう?」
そうか?
「分かってるはずだ。だから言葉があるのだろう?」
さっき虚無だって言ったじゃないか。
「意義と本質を取り違えるなよ。君達は本質に行くと迷子になるだけだ。だから、ただ意義を建てては壊すのを繰り返していけばいいのさ」
…君は迷子じゃないのか?
「ああ」
何故言い切れる?
もし君に記憶がなくなっても、迷わないのか?
「ああ」
だから、何故言い切れる?
「全ては流れだ。私はその流れの一つに過ぎない。始祖の龍を見たろ?」
見たよ。
分かってる。
分かってたんだ!
でも、
「はっはーん。まーだ引きずってんのか?」
…。
「とんだマザコンだな。あぁ、ファザコンも入ってるっけか?まぁ、児の性格上仕方ないか。」
…。そう言うなし…。
「アニマもな、君への適応がなかったんだ。」
私の?
「そう、君の」
私が何かやったのか?
「あー、違う違う。どうしてそうなるよ。これが自意識過剰って奴か」
…うるさい。じゃあ、なんだって言うんだよ。
「ジンを愛した一つに君は既に入っていたんだ。が、繋がった後アニマは君を適応できなかった。私しかいなかったからな。」
今だって同じ状況じゃないのか?
「だから、二度言わせるなよ。いいか、君は私で私は君だ。2人で“私”なんだ。“私”つまりハルシオンは既に君を有している。適応云々の以前にな。」
…。
「不服そうだな。割り切れないか。」
あぁ。
「それが、アルニオンか…。吉と出るか凶と出るか…」
君のそういう所嫌いだよ。
「私は君のそういう所可愛らしく思うよ」
ふぬっ
「まぁ、いい。見れば分かる。行こう!」
え?
「鱗に乗るぞ」




