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魔術学園でのあれこれ  作者: あめ
第一章
26/41

双子

アーサー視点です

倒れて動かないハルを囲んで俺たちは座っている。

双子はツンツン指で突っついていた。

それは止めとけよ。

アリとハブルはまだ畏れ多いのか俺とマーリンのずっと後ろに正座していた。


『ね、やっとナノスでなくなったね』

『ね、やっとナノスでなくなった』

『さっきから、ナノスやらアルニオンやら、一体何なんだ?』


双子はマーリンを一瞥してまた突き始めた。


『姉さんは俺たちエルフには分からない方法でクリュオンの流れを予測している。それによって、できる限り澱みを無くしているんだ。多分、その中でアルニオンやランバノは何かの役目を指すんじゃないかと思う。』

『なんだ、お前もわからないんじゃないか。』


俺の言葉にマーリンは少し気を悪くしたらしい。


『しょうがないだろう、姉さんは大事な事に関しては殊に口を閉ざすんだ』


それはまた厄介な…。


『そもそも、ハルはどうしてあんな事になっていたんだ?今だって…顔色すごく悪いぞ。体調悪いから人格変わったのか?』


双子は突っつくのを止めて俺の方を見た。よくよく見ると微妙に顔が異なっていた。さっきまで物を投げるような動作をしていた方は目元に黒子がある。口をパクパクしていた方は口元に黒子があった。


『『アルニオンはアタラクシアだから』』


二人はハルの髪を耳にかけた。

そこにはマーリンの本来の姿と同じ尖った耳があった。


エルフってことだよな?

他に耳がこんなに尖ってる奴はいないよな?

エルフがアタラクシアという意味なのか?


『『アタラクシアはエーテルの本質を最も分かってる』』


うん。マーリンもハーフだけどよくわかってたよな。


『ね、ランバノもフィロスもマーリンもアルニオンに教わるといいね』

『ね、それがいいね、』


マーリンじゃダメなのか?


『姉さん、それは…』

『ね、マーリン。アルニオンはやっとナノスでなくなったのね』

『ね、でも心は溢れてしまってるのね』

『『ね、だから』』


双子はマーリンを懇願するようにじっと見た。


『…、わかりました。取り敢えずアタラクシア……ハルを運びましょう。多分このままだと熱が出る』

『『よかった』』


双子は安堵し、素早く立ち上がった。


目元黒子の片割れがアリとハブルに口を開いた。

「フィロス、ランバノとマーリンと共に今後エーテルに関して理解を深めなさい」

よく通る声だった。

「「はっ」」

二人は平伏した。


今度は口元黒子の片割れが口を開いた。

「そのために、このエルフから教わりなさい。」

「「わかりました」」


『『マーリン、あとよろしくね』』

双子は言い終えるとそのまま森へ消えていった。


『…、意味がわからん』

『アーサー、2人の前でハルがアルニオンやアタラクシアだということは言うんじゃないぞ。』

『どうして?』

『姉さんがエルフと言っていただろう?都合が悪いんだ。…わかったら、渡した魔法陣を返してくれ』


俺は言われた通り魔法陣が描かれた紙を返した。

マーリンは紙を貰うと、魔法で燃やした。


「え?」

「姉さんは今回だけお前との会話を許した。…本当に特別なことなんだ。人間をあの会話に入れることはない」

「?、双子は人間じゃないのか?」

「後で話す、その前にハルを運ぶぞ」



マーリンは立ち上がり、ハルを抱き起こした。

ハルはまだ顔色が青白かった。

「待て、俺らも手伝う。」

アリとハブルが慌ててやってきた。

2人がマーリンを手伝おうとしたが、マーリンに止められた。

「自己紹介がまだだった。」

「マルクスだろ?アーサーの従者の。」

「いや、事情が変わった。俺はマーリン。此奴の従者でもない。ハーフエルフだ。」


マーリンはそう言うと耳と目にかけていた魔法を解いた。

耳は尖り、目は金色になる。

2人とも驚いて目を見開いている。


「このエルフは今不安定だ。すぐにエーテルに埋没してしまうほどに…。ハーフだがまだ俺が触れる方が安全なはずだ。」

「「わかった」」


マーリンはそのままハルを担ぐ。

おいおい、そんな腕力あったっけか?





ハルは俺らの部屋の中の、元々はハルの個室になる筈だった所で寝かされた。

マーリンは俺、ハブルとアリをソファに座らせた。


「改めて、俺はマーリン。ハーフエルフだ。巫女の島で生まれ、そこで育った。」


2人はうなづく。

俺はうなづかない。


「おい、聞いていない。巫女の島って何なんだ?」

「聞かれてないからな。巫女の島は竜の島に最も近い所にある。ハーフエルフは殆どそこで生まれるんだ」

「は?」

「詳しくはいつか話すよ」


いつになるよ?

そしてアリもハブルも訳知りだし…


「マーリンは初めまして、だな。俺はイリアムのアリだ。まだ名もないほど小さな宗派に属している。…、俺達の所では、アグニを預言者として崇めているんだ。今回預言に立ち会え、お言葉を貰えたことは、本当に二人に感謝している。ありがとう。」


アリが手を合わせて頭を下げた。

あれは預言なのか?そんな大それたことだったのだろうか?


今度はハブルが口を開いた。


「俺は改めて、ドリオスのチノア、名はハブルと言う。俺達の所でも遠い祖先の神の子としてマラルを崇めている。…本当にありがとう」


ハブルは両拳を頭の前で当て、頭を下げた。

いや、俺葉っぱ持ってただけなんだけど…


「今後、エルフであるハルにエーテルについて教わることとなる。授業が終わってから今の時間くらいまででいいか?」


おいおい、ハルに聞いてもないのに良いのか?


「それで大丈夫だ。」

「ああ、問題ない。」

「よし、じゃ終わり次第この部屋でやろう。」

「了解。」


二人はそのまま部屋を出て行った。


「ハルに聞かなくっても良かったのか?」

「いや、言い含めておいた。」

「は?どうやって?」

「言ったろ?エルフはエーテル、クリュオンとの同期が上手いって。」

「双子と同じ感じでやったのか…」

「俺がハーフじゃなきゃ、もっと通じたんだけどな…」

「そうなのか?ってか、言い含めるって同意させてないじゃないか。」

「まぁ、何とかさせるさ」


うわー、明日からこいつらのバトル見んのかよ。

こえー……。


怖いもの見たさた言うのだろうか、少し楽しみで眠りにつくのだった。

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