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魔術学園でのあれこれ  作者: あめ
第一章
22/41

存在

ハル視点です


多分R15です。

R18の部分込みはお月様にのっけてます。

目覚めた草原では鱗の色がくすみ、流れが淀んでいる。

ここで何かあったのだろうか?

魔術学園から離れているから学園の魔術の影響というわけではない。

黒色ではなく、くすんでいるのだったらずっと前に起こった事が原因なのだろう…。

色の割にはずっと淀んでいる…

とても悲惨な事があったということか…。


しばらく流れを観察し、学園の方へ向かった。


こんな状態を見ると、何かしたい、と思ってしまう。

ふふっと笑ってしまった。

やはり私は人間なのだろうか?


全ては流れ、そうわかっているはずなのに意味を求めてしまう。

そこには何かあると…。


虚無感でへこたれては、美しいとか面白いといった感覚に救われるのだ。そしてまた意味を求めてしまう。


アタラクシアとしては阿呆らしいことこの上ないのだが…


自嘲の笑みがでてしまった。





また、夢の中だった。

自室へ戻ったかどうかの記憶さえ曖昧なまま、現実と混ざり合った世界に入り込んでしまった。

夜空の下エルフの森の上、一番高く太い大木のアニマが住む太い枝に腰を下ろしていた。


「これが樹液で、これがクリュオンの結晶よ。」

「綺麗だ、」


アニマが指したのは、木の皮で作られた包みに入っている黒みのない透明感のある黄金色の樹液と、それを卵型にしたようなツルツルとした結晶だった。


「この結晶をエルフが作るのか?」

「そう、集めては型に流し入れてここの木々に吊るして干しておくの。」

「へー、あちらこちらに垂れ下がっていたのはこれだったのか。」


ジンは楽しそうに結晶を触っている。すると白く輝いた。


「あ、なんかやらかした?」

「あなたのクリュオンに反応しているのよ」

「あ、なるほど…」

「それにしても、人間にしてはよく輝くわね」

「まぁそうだな…」

「あなたの瞳と何か関係があるのかしら?」

「やっぱり聡い。この瞳を継ぐ僕らの血筋は特に魔力が強いといわれているんだ。多分それに相関するんだと思う。」

「それだけではないわ。あなたの瞳は愛される印よ。だからそんな眼鏡をしているんでしょう?」

「はー、誤魔化せませないな。その通りだよ。」

「…眼鏡を取って欲しいわ」


ニコリとアニマが言うと、ジンも微笑み眼鏡を手に取ろうとする。


パァーン


大きな破裂音が響きわたり、何度も繰り返していった。ジンは手に取ろうとしたまま固まっていた。


「………、みんなに邪魔された気がしたわ」

「え?」

「いいの。ほら、見て!」


ジンがアニマの指す方向を見ると、大きな黄金色の花が咲いていた。


「結晶を投げて、それにエルフの矢を当てクリュオンを解き放つのよ。」


ジンは美しさで声も出なかった。


「私達エルフの務めなの。」


よくよく見てみると、アニマの言った通りキラキラ光る粒が地上の方から投げられ、滞空している間に何本かの矢がそこに当たっていく。

その瞬間一気に破裂し花が咲いていた。


「ああやってクリュオンを飛ばしていくのよ。……………、こんなものね、ジンに教えられることは。」


アニマは少し悲しそうにジンを見た。


「行ってしまうんでしょう?」


ジンは微笑んだままだった。

ジンは微笑みながら眼鏡を取る。


「これを取るのは家族の前だけだ」


アニマの耳の側で囁く。

アニマは顔を赤くし、奥の寝室へと誘った。


ジンは部屋に入るとアニマの口を味わった。


「ずっとこうしたかった。」

「あら、やっても良かったのに」

「君がどれだけ本気かわからなかったから…」

「私はいつだって本気よ。人間みたいに裏も表もないわ」


アニマはそう言ってジンを抱きしめ、首に頬に瞼に唇を落としていく。


「あなたが好き。愛しているわ」


「俺もだ」


二人はお互いの想いまでも共有した。



私がいる。

アニマのお腹の中に私がいる。

思い出した。

ここから私はアニマの目で、頭で世界を見ていたんだ。

どうして、その時の記憶がなくなってしまったんだ?


その疑問とともにベッドから起き上がった。

ホブゴブリンは未だいない。

最も闇が深まるスコトスの刻だった。

闇をただ見つめる。

体の感覚を確かめようとするが、闇に溶け合って感覚がなく、未だ夢の中にいるような気がした。


「私はどうして記憶を失ってしまったんだろう」


言葉にして呟き、闇に音までも吸い取られながら辛うじて耳に届いた音で私が確かにここにいるという実感が湧いた。


安堵したのか、いつ間にか瞼が閉じられ眠りについていた。



その後は夢を見なかった。

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