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魔術学園でのあれこれ  作者: あめ
第一章
17/41

伝染

引き続きアーサー視点です

俺らは手早く食事を終えて、食堂から外の森の方へ向かった。

ちらほら生徒達が遊んでいる。

加わりたい…


辺りに生徒がいなくなったので切り出してみた。


「で、さっきのは一体何なんだ?」

「…、色々とまた思い出したんだ。で、俺は魔術を使わない事にした。」

「は?どういうことだ?愛しの君が魔術嫌いなのか?やっぱりドワーフなのか?」


マーリンは底冷えした目で睨んだ。


「まだ、その予測を捨てていなかったのか。」

「え、違うの?」

「違う。」


なんだよ。

俺の睡眠時間を返しやがれ。


「魔術によってクリュオンが侵されてしまうんだ。」

「クリュオン?」

「ブリテンで言う、空気とか雰囲気とかだ。」

「あー、言ってるな…そのことか。侵されるとどうなるんだ?」

「侵されたクリュオンはだんだんと滞って、始めにエルフ、人に伝染していく。

ブリテンでも言っていただろう、空気が淀んでいる、とかあの雰囲気はうつるんだ、とか。」

「あー、じぃやばぁが言ってたな。」


じぃやばぁは、この頃また淀み始めたと言っていた…。

そういえば、誰かが空気や雰囲気のことをエーテルって言っていたけど…誰だっけ?


「思い出してきているのは、エルフの記憶だ。エルフは人間以上にクリュオンからの影響を受ける。」

「だから魔術を禁じるのか?」

「エルフの記憶だけじゃない、感覚も蘇ってきている。魔術を自分で使うだけではなく、近くの者に使われると、言いようもない忌避感に襲われるんだ。」


なんと。

こいつ、エルフでもハーフだよな。


「エルフの血ってスゲーんだな。」

「血だけのせいではないと思うが…これは言えない。」

「あ、そう。…」


「でもそれ位の事オウェインが話してくれても良さそうだったよな〜。多分あいつなら知ってそうだよな。」


オウェインはマーリンの師匠でブリテンの魔法師団長だ。

めちゃくちゃ強い。


「そうだな、師匠は知っていたんだと思う。…ブリテンに発つ時にその眼で見極めろ、と言われたからな…。」

「黙ってた意味がイマイチわからないな。」

「そうだな…」


まぁ、もしかしたら自分達で見極めて欲しいってことだったんだろう。

そしたら、マーリンはカンニングじゃないか?ズルだズル。


マーリンは何か考えているようだった。


まぁ、言うなれば感覚が一気に支配される感じなんだよな。

そりゃ、戸惑うわな。

よく発狂しないよな。


「よく、そのままでいられるな。」


マーリンは肩を竦めた。


「正直まだ整理出来ていない。」

「多分、俺だったら発狂しているな。」

「そうか?」


マーリンは言い終えると図書館棟の方を見つめた。

そして一息つく。


「教室に戻るか。」

「そうだな。」


俺らは教室に戻っていった。




まだ早い時間に教室に戻ったため、席がちらほら空いている。

俺らはまた後ろの方に座る。


学生が戻り始めると、ピーチクパーチクさえずりも聞こえ始めた。

リタ凱旋。俺らの前の方に座った。


同時位にトーマス先生が教室に入る。

午後は魔術史ということだったが、どんなもんだろうか?


結局、退屈だった。

午前の賛美歌に時系列が組み込まれたものだった。


先ず、最初にして最後の賢者が世界を豊かにするために魔術理論を構築する。

賢者は更なる豊かさと英知の発展のため魔術、生物、物性、数・音、武術、法、歴史に秀でた7人の賢人を選定し、ここミミック諸島で最も大きい名もない島でスコーラを建国、学問国家として今に至るって流れだ。


生徒の反応は午前と一緒。

観察しても変わりはないなーと思っていた所、前の女子生徒が羽ペンを落とした。


「はいよ。」


と言って羽ペンを拾って膝をついて渡してやると、その女子生徒の顔は赤かった。


「大丈夫か?熱あるんじゃないか?」


心配して声をかけると、女子生徒は声もなくブンブンと首を振る。


「そうか。でも気をつけろよ〜」


と言って席に戻った。

女子生徒は下の方を向いていた。

俺にはわかる。

黄金角だった。

眠かったんだな…。




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