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魔術学園でのあれこれ  作者: あめ
第一章
16/41

授業

マーリン視点です。

やっと授業始まります。

今日から授業が始まる。

憂鬱だ。

一方で目覚めは最高だ、何故ならびしょ濡れだからだ。


「おはよう」

「おはよう」


いつもながら、淡々と水をかけ一言告げて部屋を出て行く奴を見送るとため息をついた。


俺は昨日のスコトスの刻まで此奴と愛しのドワーフの娘御が如何にしてヘデラに結ばれることが出来るかについて考えていた。

しかしどう考えてみても、結ばれるような可能性が考えられない。

結論、やはりあの鬼畜症を治さなければ女子のハートを射止めることはできまい。


そう結論づけた所でのこれだ。

鬼畜症完治への道のりの遠さ、そして授業開始、嘆息せずにはいられるだろうか。


悶々と考えながら髪を乾かし制服を着る。

部屋を出るとマーリンが俺の分まで紅茶を淹れてくれている。

今日は妖精でも降ってくるのか。


「ど、どうした?珍しいな。」

「詫びだ。」

「は?詫び?何の?」

「昨日整理出来たら言うと言っただろう、多分これから俺から言うことはできない。だから、約束を不履行にする詫び。」


こいつ、やっぱり律儀だな。

俺から言うことはできないということは愛しの君に何か事情があるのだろう。


マーリンが淹れてくれた紅茶をソファに座って飲む。


考えてみたら人の恋沙汰をあれこれどうかしようと考えるのは無粋の極みだな。

こいつの良い所を認めてくれる子がいるだろう、世界は広い。

と、考えていると


「顔が気持ち悪い」


前言撤回だ。

お前は一生独り身でいろ。




マーリンと紅茶を飲み終えて昨日と同じ教室に入る。まだ学生はまばらで後ろの方の席に座る。

今日は選択科目の志願届の提出した後、ノームの刻までみっちり魔術漬けだ。

まぁ、時間的拘束はブリテンの方があったな。


クスリス魔術学園とリリス魔術学園は魔術を中心に生物、物性、数・音、武術、法、歴史を学ぶ。リリス魔術学園との違いは昨日トーマス先生が言っていたように魔術講義の違いの他に、選択科目の違いがある。リリスは魔術以外の科目は教養レベルで終えるが、クスリスは選択する二科目はその単科学園の生徒達と一緒に授業を受けることになる。クスリスで俺らが他の科目の授業を受けている間単科生はどんどん進んでいくから追いつくのが大変らしい。そういえば、ブリテン人はイグノ族の言語が浸透していない為、特に大変なんだと聞いた事がある。俺も教養・試験レベルは何とかなっているが、専門用語レベルだと大変そうだ。この時だけは他の国が羨ましく感じる。


俺は武術と法、マーリンは歴史と法を選択する。

生物、物性、数・音を学ぶ方が魔術技術が向上するらしいが、マーリン曰く自分で勉強した方が早いらしい。

それに、俺らの目的にも繋がるしな。

スコーラで法や歴史を学ぶことで現在の世界の潮流についての理解が進むのだ。スコーラは記録師を世界に派遣している為それが可能となる。

ブリテンだと自国の歴史、伝承、法の仕組みしか学べないからな。

俺が歴史ではなく武術を取ったのはまぁ追い追いだな。結局マーリン先生の歴史講義があると思われる。


トーマス先生が教室に入ってきて、教室に来た生徒から選択科目の志願届を順次提出するよう指示する。

俺とマーリンが届をトーマス先生に提出すると丁度ハルも提出してきた。

今日も瓶底眼鏡だ。一昨日見た黒い瞳はそこから覗けなかった。

ちらっと見ると歴史と生物を選択していた。一緒になることはなく、少し残念に思った。


学生が全員提出できたようで、トーマス先生による魔術の講義が始まった。

なんと、今日は魔術の意義と歴史で1日が終わるらしい。

ナンテコッタ!


午前中は魔術の意義だった。

魔術の利便性と今現在どれだけの魔術師がいて、どれだけ世界に貢献しているかをずっと聞かされた。

うん、眠い。

眠い時は周りを観察だ。


やはり俺と同じ事を思った奴は何人かいるようだ。

先ずはマーリン、しっかり読書している。

次にハル、しっかり読書している。

いや、お前ら隠せよ。

後は年齢詐称の双子ちゃんにドラオスの厳つい奴。

双子ちゃんは編み物をしている。

いや、隠せよ。

厳つい奴は下を向いていた。

俺にはわかる。こいつは眠っている。何故分かったかというと、丁度前方にいる教師には眠っていることがわからない角度で頭を垂れているからだ。俺の他にこの黄金角を見出した者がいた事に感動し、途轍もなく此奴に親近感がわいた。


その他の生徒は熱心に聞いている。


魔術賛美歌のような授業が楽しいわけがない。

何でもそうだが、魔術にも一長一短がある。魔術は魔法より時間がかからず、多くの人が行えるが、魔法ほど強力ではないし、術者より強い魔眼を持っている者に破られる。魔法なら術者の魔眼云々で破られることはない。


俺らのブリテンにいるドワーフや小人族、巨人族など人間でない種族、人外族は魔術を何故か使おうとしない。

俺はそれが疑問で、ここスコーラで解を得られるかと期待していたのだがこれではダメそうだった。


因みにこのスコーラではどの種族でも歓迎という体を成しているが、実際は学生間の軋轢が強いため人外族はここには来なくなった。その軋轢の中心だったのはリタとその周辺国らしい。

マーリンもハーフエルフだと分からないよう、ここでは耳や目を隠している。


失望しながら周りを観察しているといつの間にか賛美歌は終えていた。



午前中の授業が終わり学生は皆食堂へと向かっていった。俺もマーリンと食堂へ行き、いつも通りテーブルに彫ってある魔術回路に手をかざそうとすると、マーリンがそっとその手を掴み、魔法陣が描かれた紙を取り出した。


「おい…」


俺の声も無視して魔法唱をつぶやいて行く。

すると料理が出てきた。

自分のだけずるいぞ、と思っていると、また同じように二つ目の料理を出した。


何か理由があるのだろう。周りから見られていないか確認し、声を潜めながらマーリンに話しかける。


「おい、急にどうしたんだよ。」

「あとで訳をお話しします。」


マーリンはなに食わぬ表情で食べ始めた。俺も大人になった。

黙って食べ始めた。


今日の料理はリタ料理のグラタンとい代物だった。

リタはブリテン同様小麦を主食として乳製品を好むという特徴そのままの味だった。


リタの集団は自国の料理が出てきた事に浮かれているようで、ピーチクパーチクさえずりが増していた。



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