目の色
アーサー視点です。
案の定、7人のジィさん達のお話は殆ど爆睡だった。
けど一貫して
世界に知識、知恵ある者を増やすことでより豊かな世界を作っていきましょうね、だから学べよお前ら。
というお話だったような気がする。
ジィさん達の頭は殆ど禿げていたが、目の色は茶色が殆どだ。複数の民族の混血が多いのだろう。
教官紹介の時はしっかり目を開いていた。頭を何かで殴られた気がしたからだ。多分マーリンがやったんだろう。
そちらを睨むと何食わぬ顔で一瞥してきた。
顔はいつも通り無表情になっていた。
もう機嫌は直ったのか?
最後にクスリスの魔術教官が紹介された。
髪も目も茶色で、少し黄色がかった肌をした如何にも真面目そうな中年の男だった。
残念。
名前はトーマス
何だか生徒に反して地味な先生だな、という印象だ。
これで式典は終わり生徒はそれぞれの学園の講義棟内にある主要科目の教室へと向かう。
ここ講義棟中央ホールは円形となっており、全ての学園が回廊で繋がれている。
両脇にクスリス含む総合学園2つが配置され、残りの7つの単科学園が放射状配置されている。
大きさがバカでかいから、移動だけでも一苦労だ。
今日はその一コマの授業で終わりだ。
筆記具は必要ないらしいから簡単な自己紹介やら連絡事項で終わりだろう。
なんだ、このゆとり、と思わないでくれ。
明日からみっちり入っている。
ああ、昨日に戻りたい。
憂鬱感で歩みが遅くなる。マーリンも何やら考え事をしているようで歩みが遅くなっていた。
教室に出向くと壁一面本棚で、生徒数と同じくらいの数の本が何種類もそこに鎮座していた。
多分教科書だろう。
絶望した。
何せどの本も分厚くデカイ。
この学園は何を学ばせる気だ。
席は自由に座っていいらしい。
空いている席に適当に座った。
座ったと同時くらいにトーマス先生が入ってきた。
教壇の上に立つ。近くで見ると案外背が高い。
「式典でも言ったが、クスリス魔術学園での魔術を教えるトーマスだ。クスリス生全体の担任も兼任している。」
全体を見渡しながら話した。
「クスリス魔術学園の特殊性は魔術回路の開発にある。魔術単科学園であるリス学園では魔術の実践を、もう一つの総合学園であるリリス魔術学園では魔術の実践と魔術論理を学んでいる。
クスリスでは、学生のうちに人類に貢献できる魔術回路を開発してきた者が沢山いる。皆は先代の業績を上回ることが出来るよう励んで欲しい。」
トーマス先生は中々アツイ男だった。
目を爛々とさせて熱弁していた。
クスリスは実践より理論を重要視している。
そういえば誰かが言っていた気がする。
タオを感じられなければ魔術は使えないのだが、クスリスのこの基本方針によって魔術を扱えない、タリト共和国の人々が代表的だ、そのような民族でも金さえ詰めれば入学出来ると。
結果的に学問の場というよりは外交の場としての意味合いが強くなったのだ。
ふと周りを見てみると、受験の時とは異なり平均年齢がずっと低い。
多分殆どが入学可能年齢の15才くらいだろう。15才より若い奴がいるが。
そういえば、開発には頭の柔らかさが必要だとブリテンにいた時に習っていた魔術講師が言っていた気がする。
"クスリス生高齢多し"という噂はデマだったのだ。
今日第二の収穫だ。
トーマス先生は本棚にある教科書の扱い方を説明したり、選択科目の志願届けを配布し、初授業を終えた。
「あー、終わった。食った。」
授業を終えた後、朝飯兼昼飯兼夕飯を食べ部屋へと戻った。マーリンと向かい合わせでソファに座る。
マーリンは段々と耳が尖り、目が赤く…ならなかった。
いや耳は尖っている。しかし目は赤くならず金色になったのだ。
「お前、目が……オシャレのつもりか?好きな女でもできたのか?」
金色の目で睨みつけられた。赤い目の時と同様に背筋が凍った。
「今日こうなっていた。……目覚めたんだ」
「は?誰が?」
「まぁ、気にするな。いずれ分かる。」
俺は今わかりたいんだが。
眉を顰めていると、マーリンが察したようで
「色々と思い出したことがあるんだが、まだ消化しきれてないんだ。整理出来たら説明するよ。」
「…わかった。」
マーリンは頷くと自室へと入っていった。
俺はこいつが好きになるような女は一体どんなんだろうと色々と想像していた。
きっと、何にも動じないドワーフみたいな奴だ。




