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魔術学園でのあれこれ  作者: あめ
第一章
12/41

観察

アーサーの視点です

「おい、起きろ。」


耳の傍から怒鳴ってきた。

今日は式典前日で何もないはずだぞ。

無駄に早く起こすな。


「うるさいぞ。じぃ、クィーンマブに頭を沸かされたか。今日は何もないんだぞ」


ばしゃ。


水の音がしたと思ったら俺にかかっていた。

水浸しだ。

冷たい。

ガバリと起き上がったら横には、じぃより厄介な奴が立っていた。既に制服に着替えている。

それにしても、いつになくイラついている。

眉の間、皺ができるぞ。


「今日は休みだろ。沸いたのはお前か。」

「今日は式典の日だ。沸いてたのはお前の方だ。」


はぁ?と言おうと思ったが、そのままの口で一時停止。

そうだ、今日だった。


「飯食ってる時間はないぞ。」


一言言い残すと奴は去っていった。

式典はイリウスの刻から。

太陽はほとんど真上にあった。

俺は暖風の魔術回路を紙に書き出し、それを頭に乗せて手で押さえつけながら制服に着替えていった。

着替えながらも頭がどんどん乾いていく。

この天才的な方法を編み出せたのも、何より俺に贈られた才によるものだろう。

断じて水をかけられ慣れているからではない。

最後にローブを掴んで部屋から出て行った。

マーリンは俺を待っていた。

ドアから出ると、廊下には案外まだ生徒がいた。


「マーリン、お前が水かけなかったら飯食えたんじゃないか?」

「かけなかったら起きなかったでしょう?」


言い返せなかった。



式典では七賢人からのありがたーいお言葉や担当教員の紹介を行う。

絶対に寝るな。これは。

周りは同じクスリスの生徒で座るらしい。まぁそいつらの観察でもしよう。魔術の講義以外は全て選択だ。それによっては四年間見かけないような奴もいるかもしれないからな。

式典は図書館より奥にある講義棟の中央の大ホールで行われる。中はとても騒がしかった。

マーリンは入ると忙しなく目線をホール中に向けていた。

誰か探しているのか?

あ、座る所を探しているのか?

しかし、昨日確か座席について通知されていたはずだが。

通知された席はサラノー側にクスリス生が座る。最前列には5席並んでいてマーリンはサラノー側から2番目、俺は5番目だったはずだ。実際俺らと同じ制服を着ている集団がその方向にちらほら見かける。

マーリンもその方向に迷いなく進んでいる。だとすると、やはり誰かを探しているのか?と訝しげながら取り敢えず一緒にそちらへ向かった。


俺らが座るクスリスの席は殆どの生徒が座っている。

彼らの様子を注意深く伺いながら座席へと向かい腰を下ろした。


観察結果その1。クスリス生は問題がありそうな奴らばっかりだ。

俺くらいじゃないか、普通の奴なんて。

マーリンは鬼畜だし。

式典が始まってもいい頃なのにマーリンの隣の奴、多分ハルだろう。はまだ来ていない。また墜ちているんだろう。

マーリンと俺が挟むことになった双子らしい女生徒は明らかに年齢詐称だ。顔が幼すぎるし、ちびっこい。しかもずっと何かを編んでいる。


多分ここまでが特待生で次列からは同じ国出身の生徒で並んでいる。肌や髪の毛、目の色がしっかり揃っているのだ。


2列目はアリビス、一見真面目に前を向いているが、ずっと魔術を使って何やら話し込んでいる。俺の目は誤魔化せない。

3列目はリタ、周囲への侮蔑の目を隠さずピーチクパーチクさえずっている。

4列目はタリト共和国、挙動不審。子犬みたいだ。

5列目はドリオス、皆タオがどす黒い。


以上踏まえて、観察結果その2。こいつらの目的は勉強じゃない。

安心した。

ガリ勉野郎だったら入り込む隙間はないからな。

絶対友達になれる気がしない。いや、なれない。


あ、マーリンは別だぞ。


今回の目的は、要は皆んなと友達になろうぜ、計画だからな。この観察結果からして既に達成したもんよ。ホッホッホ。


そんな考え事をしながらら意気揚々と正面に目を向けていると視界が一瞬暗くなって驚いた。

暗くした正体に目を向けると、ハルだった。ハルはこの前見た時よりも肌の白さが目立ち黒いローブ、髪、瞳が一層際立っていた。

一方で、ずっとしかめっ面をしている。

おいおい、そんな顔しているとマーリンに似ているぞ。

皺できるぞ。

更に何故か鼻に手を当てている、

よくよく見ていると鼻をつまんでいた。

臭うのか?

…何に?

ハルの隣のマーリンに目を向けると、顔は正体を向いているが目はずっとハルを観察している。

観察結果その3、最も変な奴はハルだ。


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