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魔術学園でのあれこれ  作者: あめ
第一章
10/41

エーテル

抜かしても大丈夫です!

要は『眼鏡ちゃん目覚めるの巻』です。


はじめは一つの油膜だった。

球形のそれは元の大きさは変わらずに、どんどん分割していく。1は2に、2は4に、4は8に、というように。

最終的には球形を維持出来なくなるまで小さくなって円板状の鱗のような形となって、震え始めた。その振動は段々と大きくなり遂には鱗は自身を震わせながら廻り始めた。


私はそこに乗っていた。

虹色に輝く鱗の輝きがとても眩しかった感覚が今残っている。

自分の身体の震えで受験の時の酔いが今よみがえっている。


鱗は目玉焼きのように中心が膨らんだ円盤状の何重もの層と、それらの中央を貫く一本の軸を作り上げた。鱗は球全体を巡り巡っている。


目玉焼きは美味しそうでお腹が鳴った音が今耳に残っている。


鱗が巡り巡る内に層と軸の構造は少しずつ変化していき螺旋へと変化した。


『アタラクシア、これが始祖の龍よ。』

耳を撫でるような声は言葉だけを残して今は撫でてくれない。


蜷局を巻いた龍はまるで意思を持ったかのように様々な動きを見せる。

唯一だと思っていたが、実は他にもたくさんの龍がいた。互いに身体を擦り付けあっている。


『美しいわね。…クリュオンを交換しているのよ。』

美しさへの感動は色褪せることはないけれど、今はこの声を聞く事ができない。


龍達の動きは大いなる流れと律動を、そして色彩を作り上げていく。

龍を構成する層にも変化があった。


私をのせる鱗、クリュオンは尾から頭までの各層を一気に登っていく。

この時クリュオンは各層に存在するエルフ、精霊、妖精、聖獣、植物、動物、人間をも巡っていく。



夢の中で“私"を感じた。

夢が覚めたのだ。

しかし今いるここもまた夢である。

夢のまた夢を見たのだろうか。

クリュオンに乗っている時は自己意識がなかった。

その時のことを思い出そうとすれば、"私"が経験した記憶はないのに何故か鮮明な感覚が溢れ返る。

溢れ返った感覚は私の地面を溶かし、私の天井に登りそれを突き破っていった。

天井に空いた穴から差し込む光が眩しい。

その光は私を白く染めた。



ピクリ

瓶底眼鏡の奥で瞼が少し動いた。

双子は両手に繋いだ手を少しだけ強く握った。

瞼はその後もピクリ、ピクリと断続的に動き続けた。

瓶底眼鏡は次第にずれていき、ポトリと地面に落ちる。

太陽が地面の下に沈み込もうとし、木々の影が大きく伸びていく。

始めは膝に影が落とされた。

落とされた所から肌が白く輝き始める。耳に至ると耳の先が尖り始めた。遂に身体を全て影が覆った時、輝きは一層増して今度は一気に小さくなっていく。それに伴って肌の色が変わり透ける様な白さになり、眉間の所で光は消えた。

瞼が開かれる。

そこには油膜が張られたような黄金色の瞳だった。

『『お帰りなさい。アルニオン。』』

『ただいま、シビュラ』


思考・意識をマクロな流れとして表現したかったのです。そしたらこんな事に。


クリュオン:流れ(ギリシャ語)

アルニオン:羊(ギリシャ語)


アタラクシア:ハルの真名

シビュラ:双子の真名

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