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「神崎理事長は、あなたの父なんでしょ?」
「…ちげぇよ」
その場から去ろうとする遼哉を追いかける美咲。
「ついてくんな」
「えっ?」
追いかけてきた美咲は、いきなり怒鳴る遼哉に驚く。
「…俺たち、終わりにしよう」
「なんで?…学校辞めたから?」
「全てがイヤになったんだ。あんたも含めて」
「どうして…」
涙を流しながら遼哉の腕をつかむ美咲。
「遼哉くん、別れる理由ちゃんと言いなさい」
後ろから紗佳の声が…。
振り向くと紗佳と誠が俺たちの話し合いを聞いていた。
「…なんでおまえたちがいるんだ?」
「美咲サンと一緒に帰ってきたんだよ。気付かなかったのか?」
「…あっそ。誠ならわかってくれるよな?俺の気持ちを」
「…わからないほどじゃないな」
「…紗佳サン、整理させてほしいんだ。当分の間、美咲サンのことお願いします」
紗佳は何も言わず美咲を抱えながら遼哉の腕をつかんでいた手を無理矢理離した。
「ごめん…」
それだけ言い、遼哉はかばんを持って出て行った。
誠は、遼哉の後を追いかけた。
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「どうして別れを告げたんだ?」
遼哉は、海を眺めながらタバコを吸い始めた。
「…もしかして留学するから別れを告げたのか?」
「…美咲サンは俺と付き合うより、いい人と付き合ったほうが幸せだと思う」
「…好きなんだろ?」
「好きだから別れるんだ。美咲サンだけは…幸せになってほしい。それが俺の願いだ」
「…おまえ、ココ(日本)に戻ってこないつもりなのか?」
「…わからない。あっ明日、俺の叔父の会社に来てくれ」
「叔父の会社か?わかった。で、いつ留学するんだ?」
「…5日後。急で済まない」
「出発は5日後?ホントに急なんだな」
「手続きはもう済ませてあるんだ。ところで、俺が日本を発つことをあの2人には言わないでほしいんだ」
「紗佳もか?」
「ああ」
「そっか。向こうに行っても連絡だけはしろな」
「そのつもりだ。心配すんな」
「卒業したら大学行きながら親父の仕事手伝うつもりだ。仕事で向こうに行けたらそんとき会おうな」
「おまえが真面目に働いていたらの話だけどな」
「アハハ。そだな。出発する日、俺が見送ってやるぜ」
「サンキュな。出発するまでは叔父のところにいるから。パニックになっている美咲サンのこと頼むな。じゃあ」
誠にそう言い去っていった。
誠は、去っていく遼哉の姿が見えなくなるまで見ていた。