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〜回想〜
「遼哉が私のところに訪ねてくるとは思わなかったよ」
青山建設の社長である青山雅彦がそう言った。
「青山雅宏の弟ですよね?」
「青山雅宏は私の兄だ。この世にはもういないけどな」
「…俺の父は、青山雅宏だったんですか?」
「そうだよ。あれ?知らなかったのか?あっそうか…兄が事故で死んだのは君が生まれて間もなかったんだったな」
「…最近、知りました」
「そうか。あっそうそう。美和子さん元気してる?」
「美和子…あっ母ですか?11年前、死にました。ある人に殺されてね」
「美和子さんが死んだ?」
「はい。そして、つい最近、祖母も他界しました」
「…じゃおまえ1人なのか?」
「はい。祖母が死んで整理していたら日記を見つけたんです」
「日記?」
「最初は、母がつけていたようです。死んでからは祖母がつけていたみたいです。俺があなたを訪ねたのは…
日記で、あなたの存在を知ったからです」
「私の存在?」
「本当の父は、別にいたということを日記で知ったからです」
「本当の父?」
「日記を読むまでは、父が明聖学園の理事長である神崎っていう人だと思っていました」
「…神崎?明聖学園って兄が経営してたはずじゃ…」
「はい。父が死んで神崎は就任し、その後、母と再婚したんです。でも、わずか2年で離婚しました」
「その後、美和子さんは殺されたってことか?」
「父…青山雅宏は、神崎に殺されたという事実を知った母は、神崎に問い詰めたが殺された。母は、神崎に。全てはこの日記に書かれているとおりです」
「ちょっと待て!兄は事故で死んだはず」
「日記によると事故死に見かけたらしい。詳しくは調べてみないと…」
「…そうか…私も調べてみるよ。遼哉、今はどうしてんだ?」
「俺?高校に通っています」
「どこの?」
「神崎のいる高校」
「なんでそこなの?」
「祖母の命令で」
「そっか。生活とかは?」
「一緒に住んでいる人がいます」
「なら安心だ」
「聞きたいことがあります。父と母は幸せだったんですか?物心についた頃はどっちもこの世にいなかったから…」
「ああ、すっごく幸せだったよ。それを聞くために私を訪ねたのか?」
叔父と話したのを思い出しながら辛そうに松葉杖で支えながら歩いて帰った。