13
日差しで目を覚ます遼哉。
−あれっ?なんで裸なんだろ?つーか、ここ美咲センセの部屋だよな−
「あ"−!!」
状況を理解した遼哉は、慌ててズボンをはいて
においのするキッチンのほうにそっと目を向けた。
大声で気付いた美咲は、遼哉に近づいて
「おはよ。そろそろ起こそうと思っていたところなの」
ゆうべのこと、何もなかったように言いかけてきた。
「おはよ…なぁ、ゆうべ…もいかして…」
念のため、確認をする遼哉に対して美咲は照れ始めた。
「あっ…悪い。あんなことしちゃって…」
気まずそうに謝る遼哉。
「ううん。そんなこと気にしてないわよ。朝食できてるから食べよ!」
「…ああ。Tシャツ着てくんわ。先に食べていいよ」
一回、部屋に戻って脱いだ服を探す遼哉。
−落ち着け!俺!美咲センセと1つになれたんだよな−
自分の頬を叩いて、服を着てキッチンのほうに再び戻る遼哉。
朝食を食べようとした時、インターホンが鳴った。
美咲が出てみるということで遼哉、食べ始めた。
「遼哉は?ゆうべ、電話よこす約束だったんだけどかけてこなかったからさ」
誠の声に気付き、玄関のほうへ歩きながら
「なんだよ?」
「おいっ!なんで電話よこさなかったんだよぉ!」
「あっ、忘れてた。悪い」
「まっいいや。約束どおり美咲センセのとこで泊まったんだから別にかまわん」
それだけ言い、去っていった。
「なんだよ…あいつは」
文句を言う遼哉をみて笑う美咲。
「心配で来てくれたんだね」
「まっそうだな。さて、食おうぜ」
朝食を食べる2人。
「ねぇ…ゆうべ、何かあったの?お酒も飲んでいたみたいだから」
「…なんでもねぇ」
さっさと食べ終えて、立ち上がってベランダへ行き
ポケットに入っていたペンダントを取る遼哉。
そして、それを眺める。
「…ょうやくん…」
「遼哉くん」
美咲が遼哉に声かけるが反応がない。
ベランダにいる遼哉に近づけてビクッと驚く。
遼哉が涙を流している光景に。
「ねぇ、どうしたの?」
遼哉の肩を叩きながら声をかけた。
「えっ?!いや、なんでもない。目にゴミが入っただけ」
ごまかしながら目をこする遼哉。
「今日、何か予定ある?」
「俺?ないけど…」
「じゃ1回ウチに帰ろう?ずっと帰っていないんでしょ?」
「ウチ?!…俺の?」
「そうよ。」
−まずいな…ゆうべ、ここで酒飲んで暴れたのがバレる−
「どうしたの?急に黙り込んで」
「いや、何も。なぁ、ウチに来ても文句とか言わない?」
「なんで?」
「見ればわかることだからさ。あとさ、しつこく聞かないと約束してくれ」
「…わかったわよ。さぁ、行くよ!用意して」
+++
「なんで汚いの?」
美咲が散らかった物を片付けながらブツブツ言う。
「なんでビール缶に酒瓶があんの?」
「なんでゴミ箱に捨てないの?」
小言、言われてイラ立つ遼哉。
その時、誰か訪ねてきた。
「遼哉?いないのか?」
ドアをノックしながら言っている人がいた。
遼哉は、その声が誰なのかわかったようでドアを開けようとしなかった。
−神崎か。しつこいな−
「いいの?出なくても…」
言いかけている美咲の口をふさぐ遼哉。
神崎は、応答がなく留守だと思い込んで帰っていった。
−ふぅ〜助かったぁ−
美咲が苦しそうに足をバタバタしていたのを気付き、手を放した。
「ゴメン。忘れてた」
「はぁはぁ…ん、今のは誰だったの?」
「なんでもねぇ。さっさと片付けよう。いや、もういい。帰ろっか?送るよ」
「あたしの質問に答えてよ!」
「なんでもねぇってゆったんだろーが!帰るぞ」
美咲のバックを持って無理やり部屋から追い出す遼哉。
遼哉の態度にブチ切れた美咲は、遼哉からバックを奪ってスタスタと歩いていった。
「おいっ!なんで怒ってんだよ」
「怒ってない!一人で帰るからあたしのこと送らなくてもいいよ」
「怒ってないだと?しつこく聞かないっていう約束だったんだろ?」
そう言い、ため息つく。そして
「もういいや!俺のこと何も知らないくせに!」
ポケットに入っていたペンダントを美咲にぶん投げて部屋に戻った。
美咲は、涙を流しながら投げられたペンダントを拾って帰っていった。