12
居酒屋「うみ」でいつものように働く遼哉。
「まだやってるかな?」
1人の客がそう言いながら店に入ってきた。
「いらっしゃい…何しにきたんだ?帰れ!」
神崎という理事長だった。
「お客として来たんだ。追い出すのか?」
ムッとした態度で案内する遼哉。
「カウンターでいい」
そう言われ、カウンターに座らせ注文をとる。
「何時に終わるんだ?話がある」
無視しながらビールを運ぶ遼哉。
「10分だけでいい。なぁ、頼む」
「仕事中なので今、さっさと用件を話してください」
「ここじゃまずい。店の外で待ってるから」
神崎は、ビール1杯だけ飲んでお金をおいて店から出て行った。
バイトを終え、店から出た遼哉は気付く。神崎の姿に。
「おつかれ」
「まだいたのか?…用件、さっさと言え」
その場でタバコを取り出し吸い始める遼哉。
「おまえ…まだ17歳なんだろ?タバコはやめなさい」
タバコを取り上げる神崎。そして
「哀川のままでいい。一緒に住まないか?今、1人なんだろ?」
「住むか、アンタと」
「どうしてもか?」
「ああ。俺はアンタを許すことなんてできないから」
「…あの時のことか?仕方がなかったんだ」
「用件はそれだけか?他にないなら帰る」
そう言い、遼哉は神崎から去り、
誠との約束を忘れて自分のアパートに帰った。
冷蔵庫を開け、冷やしたビールなどの酒を取って飲む遼哉。
空缶を壁に向けて投げて叫ぶ。
「ちくしょー!!!」と。
気が晴れない遼哉は、部屋から出て美咲の住むマンションに向かった。
部屋に着き、ドアを叩くが応答がなかった。
−いねぇのか…−
その場にしゃがむ遼哉。
数分後、美咲が帰って来てしゃがんで寝ている遼哉を見て
「遼哉くん?」
肩を揺らしながら声をかけた。
「んっ…あ!美咲ぃ〜」
「どうしたの?あっ…飲んだの?におうよ」
「エヘヘヘッ」
「どのぐらい飲んだの?まだ未成年でしょ?」
「みーさーきぃ」
美咲に抱きつく遼哉。
「キャッ!」
はずみで後ろに倒れる美咲。
「ちょっと…ねぇ、離して!部屋に入ろ?」
遼哉の背中を叩きながらそう言った。
そして、無理やり立ち上がらせようとする。
引っ張られた遼哉は、なんとか立ち上がり
美咲に抱きついたまま部屋に入る。
その後、キスし始めた。
最初は抵抗した美咲だったが、いつもと違うキスだと気付いてそのまま受け入れた。