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無言のまま手当てする美咲。
遼哉も無言でいた。
「…ゴメンね」
美咲がつぶやくが遼哉は顔を上げようとしない。
「痛かったでしょ?ここ」
遼哉の頬を触る美咲。
遼哉は、美咲のその手を振り払ってシカトした。
「どうしてケンカしたの?2人の話によると久々のケンカだなって言ってたみたいなんだけど?」
「ムシャムシャしてたから。つーか、関係ねーだろ」
「あなたはあたしの生徒なの」
「担任でもねーくせに」
「…」
「なぁ、どうして俺にかまうんだ?」
「…好きだから」
「はい?」
「好きなの。遼哉くんのことが」
固まる遼哉に抱きつく美咲。
「助けたいの」
涙を流しながら強く抱きしめる美咲。
そして、遼哉にキスをした。
何されているのか理解した遼哉は、ハッとなり美咲から離れ、
「…帰る」
そう言い、部屋から出て行った。
しばらくしてから、誠と紗佳が帰ってくる。
遼哉がいないことに気付き、誠は美咲に聞いた。
「…帰っちゃった」
「どうしてとめなかったの?ここに泊まらせるつもりで連れてきたのに!」
紗佳が美咲を怒鳴った。
「紗佳!車、借りるんわ!」
そう言い、車のキーを持って出て行く誠。
「…だって告白したんだけど…ひっく…フラれちゃった…ひっ…」
美咲が泣きながら紗佳に言った。
「えっ?!断れたの?」
「ううん…ふぇ〜ん…気が付いたら遼哉くんにキスしていて…ひっく…突然…帰ると言って帰っちゃったの…」
「なんだぁ〜!大丈夫よ。遼哉くんはどうしたらいいのかわからなくなっただけだと思うよ。色々あって愛情というものがわからない人だからね」
美咲の背中をさすりながらなぐさめた。
+++
「やっと見つけた」
海の近くでボーっとしている遼哉を見つける誠。
遼哉に近づき、横に座る誠。
「何かあるたび、ここに来てるよな」
遼哉は、その声に気付いて隣を見た。
「…誠」
「逃げなくてもいいんじゃないか?美咲センセもおまえのこと好きだったんだろ?」
「どう接すればいいのかわかんねぇんだ」
「…おまえ、泣いてんのか?」
「いや、別に…」
「好きになるのがそんなに怖いのか?」
その後、誠に説教される遼哉。
美咲に謝れ。
本気で恋愛しろ。
理事長のことは気にするな。
とりあえず今から美咲のところに行け。