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【特別版】 吹奏万華鏡 青春(アオハル)の茂華楽章  作者: 幻創奏創造団
榊澤優愛世代
9/14

♪8楽章 集結! 鳴り響く茂華の音色

――9月下旬♪

 茂華中学校が東関東大会を終えてすぐに、新しいイベントが舞い込んできた。

 それは茂華小学校、中学校、高校が合同の演奏会をするというイベントだった。


合同演奏での演目の『東京スカパラダイスオーケストラ』。そのドラムの譜面が、珍しく瑠璃に配られたのだ。


そして瑠璃は早速、ドラムの楽譜の解読を始めた。

そんな中、優愛が突然、こちらを見てくる。

「あ、これフォービートじゃん」

彼女はそう言った。

「フォービート?」

「そう、ツ、パン、ツ、パン!っていうやつ」

それは通常より簡略化されたものだった。いかにも、初心者の譜面だ。

「へぇぇ」

瑠璃が、優愛の知識に感心する。

「取り敢えず、やってみよっか!」

「うん!」

瑠璃は大きく頷いた。取り敢えず、早く叩きたくて仕方がなかったのだ。


 その後、楽器室にドラムの音が響き渡る。

「そうそう。いいじゃないこ」

優愛が、そう褒めて、瑠璃の頭を撫でる。

「えへへへぇ。ありがと…」

瑠璃は素直に喜んだ。優愛は更に頭をくしゃくしゃと撫でてやった。


すると瑠璃が少し重い口調で言う。

「私ね、いっこだけ嘘ついてたんだ…」

それは『嘘をついてた』という内容。優愛はその意味が皆目理解できなかった。

「んっ?」

思わず首を傾げた。それを待たずして、

「自由曲で、『メトセラ』やったじゃん?」

彼女は問いを投げ掛けた。

「うん」

優愛はその問いに頷いた。

「私、ソロで和太鼓やったじゃん」

「うん」

そう言って、ふたりは毛布の掛かった和太鼓の群を見る。


 和太鼓のソロ。それは優愛と瑠璃が自由曲にて、和太鼓ソロを務めた『メトセラⅱ』だった。この曲を大会で演奏した所、東関東大会で銀賞であった。


 しかし、それが一体どうしたと言うのだろうか?

「私ね、ここへ引っ越す前に、和太鼓習ってたの」

すると瑠璃は、恥ずかしそうにそう言った。

「えっ?初めて聞いた!」 

それはまさに青天の霹靂。驚きの声が飛び出してきてしまった。

 すると瑠璃は更に、恥じらうような素振りを見せた。彼女は口をぱくぱくと動かす。

「優愛ちゃんに、太鼓やったことあるって言っちゃったら、甘えられないと思って、最初からずっと黙ってたの」

「そうだったんだ」

優愛は大きく目を丸めた。それと同時、甘えたかったんだ、と優愛は、瑠璃の可愛さに笑みが出てしまった。


「すごく、でっかい和太鼓やってた」

瑠璃はそう言って両手を大きく広げた。余程大きな太鼓だったのだろう。

「…すごいね」

反射的に優愛はそう言って、にこりと笑った。それに呼応するように、瑠璃も目を細めて笑った。


 ちなみに、その和太鼓クラブとは東藤町にある大規模クラブ『天龍(テンロン)』。後にふたりは、この団体の体験に引き込まれるとは、この時、知る由もなかった。



     ♪       ♪      ♪



――数日後♪

 茂華中学校にて、合同練習会が行われた。この演奏会では、合奏だけでなく、更なる技術の向上の目的もあった。


「先輩、おはようございます」

朝一番、後輩の希良凛が話しかけてくる。

「あっ、おはよう」

優愛もニコッと笑い、挨拶を返した。

「眠いね」

「本当ですね」

2人は音楽室へと歩む。


 音楽室に近づくにつれて力強いドラムの音が、鼓膜をたたいた。

「これ、瑠璃さんが叩いているんですか?」

音楽室へあと数歩という所で、希良凛が優愛へ訊ねる。

「そうみたいだね」

「最近、ずっとそうですよねぇ」

希良凛が呆れたように言う。しかし優愛は対照的に笑った。

「瑠璃ちゃんにとっては嬉しいんだよ。ドラムを任されたこと」

「えっ?」

希良凛は首をかしげる。

「ドラムは、打楽器奏者の憧れだからね」

そんな彼女に、優愛がそう言った。


「先輩も憧れたんですか?」

その言葉に感化されたように、希良凛が問う。しかし優愛は苦笑を返した。

「うーん。最初は少し。でも、やっていくうちに、憧れよりも、尊敬の方が大きくなってきたかな。難しいもん」

「へぇ…、私は、先輩ほどやったことないので、分からないんですが…」

 2人は音楽室へ入り、近くの椅子に腰掛ける。瑠璃と凪咲は全く気付いてすらいない。

「さっちゃんも、すぐに分かるよ」

 しかし希良凛は、瑠璃をまだ先輩として認めていないのか、少しぎこちない。子供っぽい所が気に入られていないのだろうか?

いずれにしても、仲良くなる日はいつか来る、と信じている。



 ふたりが話していた間にも、まだ瑠璃と凪咲は打ち合わせをしている。瑠璃のドラムに、凪咲のクラリネットが美しく響いた。

「…うんうん。瑠璃、これでいい」

「ありがとね、凪咲」


その時、優愛も希良凛に問う。

「さっしーも練習したら?」

「私は結構です」

その時、大量の子どもたちがやってきた。


「…練習はここで、だよな?」

堀江(ほりえ)玖打(きう)という男の子の声を皮切りに、様々な生徒たちがやってきた。

「…はいはい、こっちでーす!」

優愛の先導に、瑠璃と希良凛も大人しく従った。様々なパートの様々な奏者。音楽室には大量の人で埋め尽くされた。


 そして笠松がやってきた瞬間、

「礼!お願いします!」

『お願いします!』

白夜の号令に続いて、全奏者が笠松へ挨拶した。

「お、お願いします…、はやいわねぇ」

そう言う笠松の声は感心しているようにも、呆れているようにも聞こえた。

「あははははっ…」

 優愛も、挨拶したあと、何だか可笑しくて苦笑してしまった。元はと言えば、白夜の提案だったのだが。




こうして、各パートごとに練習が始まった。


――図書室前の広間(木管パート)

「私、ここわからないです」

「ああ、ここはねぇ」

ちなみに、木管はクラリネットやオーボエ、フルートなどだ。

 そんな中でも、伊崎凪咲はクラリネットパートの中学2年生だ。凪咲は、小学生の女の子に、クラリネットを教えていた。

「あ、できた」

その女の子は、思うように音が吹けなかったようで、凪咲が教えると、すぐに吹けるようになった。

「分からないことが、あったら聞いてね」

「うん!凪咲ちゃん、ありがとう」

「…どういたしまして」

凪咲は、そう言ってクラリネットを構えた。

(合同練習なんて、春にやった演奏会以来だな)

そうつぶやいた。


 一方、学校の垣根を越え、フルートパートも教え始めていた。

「…なるほどー。ここはもう少し息を吹き込むを早く。さすれば良い奏でが……」

「要するに、もう少し息を吹き込むのを、早くした方が良いってこと」

「は、はい!」

音織に補正を入れながら、白夜も小学生に教えていた。

「あ、ありがとうございます」

「ううん、こちらこそ。えっと、お名前は?」

中畑(なかはた)みるくです」

「みるくちゃん、ここも、もう少し息を早めよっか?」

「はい!」

どうやら、普通に喋る白夜の方が適任のようだ。



その頃、音楽室。

 音楽室は、打楽器パートの練習場になっていた。様々な声が飛び交う。

「あの、すみません」

古叢井瑠璃が練習していると、小学生の女の子が話しかけてくる。

「はい」

瑠璃は、少し声のトーンを上げる。目の前にいる女の子は少し小さい。

「えっと…えーっと…」

その少女は、瑠璃の胸元を見ていた。

瑠璃は、もしかして…と気付く。

「名前、分かる?」

「あっ…!」

問いの内容は図星だった。少女は瑠璃の名前が分からないらしい。

「私は、古叢井(こむらい)瑠璃(るり)だよ」

そう名乗って、柔和な笑みを浮かべた。

「あっ!ありがとう…、る、瑠璃…さん…」

「瑠璃ちゃん、で大丈夫だよ」

「うん!」

「えっと、君は?」 

「私は…澤海(さわみ)奏水(かなみ)です…」

「奏水ちゃん、よろしくね」

瑠璃はそう言って微笑んだ。


 その様子を見ていた希良凛が、苦笑する。

「苗字、何度見ても難しいですよねー?」

「だよね。でもカッコいいよね。文字が」

「そうですね」

「でも、本当に瑠璃ちゃんが、ちゃんとした先輩になれてよかった…」

すると、優愛が、ホッと息をつくように言った。

「えっ?」

その言葉に気になった希良凛が、こちらを見てくる。その目は疑問に満ちていた。

「瑠璃ちゃん、元々人見知りだったんだよね…」

「へぇ。初めてあった時は、そんな感じしなかったですけれどね」

「なんか…私のお陰らしいよ」

希良凛は、その言葉に目を細めた。

「影響力が強いんですかね。先輩」

「どうだろうね?後輩」

2人は、ふふっと笑った。

最近、この2人の仲は、更に良くなってきている。


 その頃、高校生の女の子が、瑠璃へ言ってきた。

「あの、古叢井さん、ここ、もう一回いいかな?」

彼女は、少し驚いた表状をするも、

「分かりました」

と愛想よく笑った。

「…朱雀先輩、ここはどうやるんですか?」

「ここはね…」

瑠璃に話しかけてきた高校生。それは高校1年生の朱雀(すざく)美玖音(みくね)だった。

 美玖音の打楽器の技術はプロレベルで、瑠璃の演奏を安定させていく。数分後には見違えるように、改善がされた。

「…うんうん!じょうずじょうず!!」

「ありがとございます!」

瑠璃が嬉しそうに礼を言う。

「…ふふっ、本番も頑張ろうね」

すると美玖音がそう言った。その表情は彼女への期待に満ちていた。

「おー!」

その返答には、瑠璃は腕を小さく上へ上げて、可愛らしい返事をしてみせた。


『可愛いー…』

『うちの吹部に入ってくれないかなぁ』

周りの女子は、瑠璃に向けて黄色い声を出している。余程、彼女の愛らしさがウケたのだろう。


「…瑠璃さん、本当にモテますね…。女子に」

「たぶん、男の子にもモテモテだと思うよ」

ふたりは、先輩女子と笑う瑠璃を、少し羨ましくも感じた。


「…あの、先輩方」

その時、ふたりの男の子が話しかけて来た。末次と堀江、彼らは正反対の性格をしていた。

「…堀江くん、すごく上手だね」

堀江(ほりえ)玖打(きう)という男の子は、ボンゴをたたいていた。そんな彼はアドリブも入れた、かなり高度な技術を有していた。

「これくらい、俺にとっては朝飯前です。むしろ、もっと上手くなった方がよい」

それでも玖打は、更なる高みを目指しているようだ。プロ意識があるのだろう。

 一方の秀麟(しゅうりん)という男の子は、希良凛からサスペンドシンバルを教わっていた。

「一気に…離す!」

「指原さん、分かりました」

「希良凛ちゃん、でいいよ」

「あ、では…希良凛ちゃん!」

「かーわいい」

秀麟の小学生らしい無邪気さに、希良凛は思わず、指導に力が入ってしまう。

 このように、パーカッションパートも、和気あいあいと教え合っていた。




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次回の公開をお楽しみに♪

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