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【特別版】 吹奏万華鏡 青春(アオハル)の茂華楽章  作者: 幻創奏創造団
榊澤優愛世代
6/13

♪5楽章 運動会 走る吹奏楽部

ご覧いただきありがとうございます!

是非、感想や評価、ブックマークやリアクション等を宜しくお願い致します!

次回の公開をお楽しみに♪

 ゴールデンウィーク明け。登校した優愛は、職員室から出た笠松へ話しかけた。

「笠松先生」

「あ、榊澤さん」

優愛は重い口を開く。

「…あの、瑠璃ちゃんについて、なんですけれど……」

「古叢井さんがどうかしたの?」

「…あの…太鼓類をやらせてあげてほしいんです」

「……」

優愛は瑠璃との約束通り、こう頼んだのだ。

「…なるほど。それは運動会の行進曲で、ですか?」

「はい!」

優愛はこくりと頷いた。

「なるほど。今年はシンバルやらせる予定だったんだけど…」

しかし、笠松にとっては既にもう考えていたらしい。

「…明日、楽譜を配るはずだったんだけれど、榊澤さんの頼みなら……」

「ありがとうございます!」

笠松は、新3年生の優愛と、望む瑠璃の言う事を叶えてあげる事にした。 


(…ホントに優しい先輩なこと)

優愛を背にした彼女は、心の中で小さく呟いた。細く閉じた目が感銘で震えた。

 だから瑠璃は、優愛に強く懐いているのだな、と思った。恐らく、この結束力は部内に大きな力をもたらす、笠松はわかっていた。



――翌日♪ 

 音楽室にて早速、楽譜が配られた。運動会の行進曲では鉄板の曲だ。

《鉄腕アトム 〜吹奏楽Ver〜 》

《威風堂々》

今年はこの2曲だった。鉄腕アトムは毎年やっているから、この中学校では鉄板の1曲だ。

「…打楽器の古叢井さんは、バスドラムとシンバルをやってもらいます」

「は、はい!」

笠松に口頭で言われ、瑠璃は思わず動揺してしまった。すると優愛に肩をたたかれる。

「…よかったね」

「うん!ありがとう、優愛お姉ちゃん!」

ちなみに今年度、この時期の打楽器パートは、瑠璃と優愛のたった2人だった。


 その後、副顧問の中北(なかきた)(かえで)に瑠璃は呼び出される。ちなみに優愛は、無論スネアドラムで、難しそうなロールを繰り返していた。

「…瑠璃ちゃんはリズム感がついてるから、今回はサスペンドシンバルとバスドラムを任せるよ」

そう言って中北が指さした先には、黄金色の円盤が柱に突き刺さったサスペンドシンバルと、少し小柄なコンサートバスドラムがあった。

「…はい」

瑠璃が返事をすると、中北は大きなマレットを手渡す。

「バスドラは、このふわふわなマレットを使いますよ。太鼓の皮も、硬めなものを使ってるけど、強く叩き過ぎないようにね」

「はい!!」

もう壊さない、瑠璃は心得ている。

「…サスペンドシンバルは、ドラムスティックで叩くよ」

「はい」

(へぇ…)

瑠璃は去年、合わせシンバルといわれるシンバルを演奏した。慣れない体勢に、楽器が重くて大変だったのを覚えている。


 すると中北が瑠璃を、バスドラとシンバルの真ん中へと連れ出した。

「ふたつを挟むように置くから、瑠璃ちゃんは交互にたたくだけだよ」

「…おぉ」

「右手がバスドラ、左手がシンバルね」

「はい!」

これは打楽器パートの人数が2人と、人数が少ない故だ。それに太鼓類をやりたいと言う瑠璃には、ピッタリな形式だろう。

「…じゃあ、スティック持ってきておいで」

「はい!」

中北に言われ、瑠璃はスティックをバックから取り出した。

「あらあら、新品?」

「はい!ゴールデンウィークに買ったんです!」

「そうなんだぁ」

「優愛お姉ちゃんとお揃い…」

瑠璃は頬を赤くして笑った。中北はその反応に呼応するように、穏やかに笑い返した。

「…じゃあ、やってみようか」

「はーい!!」

かくして、瑠璃の特訓が始まった―――。



――その頃、東藤高校♪

 部活帰り。優月と想大が運動会について、話していた。優月が吹奏楽を始めると、想大も吹奏楽をはじめた。ちなみに、優月は希望通りパーカッション、想大は成り行きでホルンになった。

「御本から誘い?」

「そう。美咲から誘い」

優月はスマホを見る。御本美咲は元フルート奏者だった。成績共に優秀な奏者で、御浦高校へ進学した。

「…美咲の誘いだし、妹の美優の運動会だし、行こうかな」

優月はそう言いながら、美咲へメールを返信する。

「はぁー、俺はどうしよかな」

「古叢井さんに会うんじゃないの?」

「…あー、そうだった!」

想大は頬を赤らめた。想大は瑠璃のことが好きらしい。


「…あと堀田くんも来るらしいよ」

すると想大がそう言った。

「…えっ?堀田が?」

堀田(ほりた)俊樹(としき)。茂華中学校吹奏楽部の元部長だった男子だ。

「まぁ…、美咲も行くし、友達いるなら…いいか」

ちなみに堀田とは、優愛への片思いの件で少々、因縁があった。 

それも告白した今、きっと無効だろう。



――数週間後♪

 土曜日。雨天に苛まれることなく、晴天に恵まれたまま、運動会は決行された。

 しかし、優月たちにとっては最悪なものだった。


「…はぁあ。美咲先輩、午後まで来ないって」

「え…?部活なの?」

優愛に香坂白夜が話しかけてきた。ふたりは徒競走の直前だった。

「そう。美咲先輩のお母さんから聞いたの。さっき」

「それは…ドンマイ」

どうやら、美咲のいる御浦高校吹奏楽部は運悪く、午前中に部活が入っていたらしい。

「…なんか残念」

「そうだね」

優愛も必死に慰める。しかも、優月と想大も所属し始めた東藤高校吹奏楽部も、午前中は部活が入っているらしく、優月や想大も来ていない。


「優愛お姉ちゃん!想大先輩、部活だって…」

「…だよねぇ。残念」

瑠璃も案の定、落胆してきた。ちなみに瑠璃は、2年3組ということで、赤組のハチマキを額に付けていた。



 しかし時間も競技も待ってくれるはずがない。流水の流れるように競技は進行していく。

「…はっ…はっ…はっ…!!」

学年選抜リレーに選ばれた瑠璃が、精一杯走る。そこに別クラスの久城(くじょう)美心乃(みこの)が追いついてしまった。

「はっ…!」

瑠璃は美心乃を横目に見て、更にスピードを上げた。更にハチマキが風に揺られる。


「…瑠璃ちゃん、逃げ切れるー!頑張って〜!」

「美心乃!抜かしちゃえ!」

瑠璃の先輩である優愛はもちろん、美心乃の先輩の新村(にいむら)久奈(くな)も応援する。

「…オーボエが負けるわけない!」

久奈が優愛を見る。

「瑠璃ちゃんが負けるわけない!」

しかし優愛も負けじと、瑠璃を推す。ふたりのスピードはかなり拮抗していた。

「瑠璃ちゃーん!」

「美心乃〜!!」

ふたりの先輩は、後輩に声援を送っていた。

しかし、次にバトンが早く渡ったは……、

『赤組!!はやい!はやいぞー!』

赤組……瑠璃だった。


「きゃー!瑠璃ちゃんはやーい!流石!!」

「…ぐっ、」

瑠璃のスピードの方が圧倒的に速かった。優愛は歓声を上げて喜んだ。

「…あらあら」

そこへ音もなく白夜がやってきた。

「…ナギちゃんも速いし、赤組が勝ちそうね」

「…ぐぅ、美心乃ぉ」

悔しがる久奈に、白夜が肩をすくめた。

「美心乃ちゃんが遅いんじゃなくて、瑠璃ちゃんが速すぎるだけ」

美心乃も優秀なオーボエ奏者で、体力も当然申し分ない。だが、瑠璃の方が圧倒的に優秀なだけだった。


次に渡ったは、伊崎(いさき)凪咲(なぎさ)。部内トップクラスのクラリネット奏者だ。2年生ながら、既に全国レベルの奏者である。真面目な彼女は体力作りを欠かすことなく、足の速さも優れていた。

「凪咲ぁー!頑張ってー!」

「…はっ……」

親友の凪咲へ、瑠璃が声援を送る。大きな声が凪咲の背中を押していた。それを具現するが如く、更に、他の組との距離を離していく。


「なぎさ…!はぇえ!」

「伊崎と古叢井いれば、リレーと駅伝は何とかなるな」

吹部外のクラスメートにも言わせしめる、このふたりの活躍にて、2学年対抗リレーは赤組の圧勝だった。

「…やっぱり、ナギちゃんは優秀ね」

「…美心乃だって!」

「瑠璃ちゃんだって!」

この3年部員は、それぞれの自慢の後輩を掲げ、論争をしていた。



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