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【特別版】 吹奏万華鏡 青春(アオハル)の茂華楽章  作者: 幻創奏創造団
小倉優月世代 
4/13

♪3楽章 告白後 繋がる友情

 3月7日、優月の誕生日の翌日に、卒業式は行われた。卒業式は厳格な雰囲気で行われた。

 その卒業式の直後、近くの旧校舎施設で、伝統の中学校卒業の打ち上げパーティーが行われた。


――打ち上げパーティー会場(旧校舎)

 食事会には、スマホの持ち込みも可能で、仮装してくる人も少なくはなかった。優月も黒縁(くろぶち)の伊達メガネを掛けていた。

「優月!メガネ似合ってるな」

「伊達メガネだよ。八条くん」

「連絡先交換しよーぜ!」

「…あ、いいよ」

 食事会が始まり、最初に話しかけてきた友達は、八条(やじょう)龍雅(りゅうが)という男子だった。彼は成績優秀で生徒会でも活躍していた。

そんな彼だが、普段は気さくで、優月のように伊達メガネをかけている。

「…おっけーだね」

「QRコードでできるの、凄く便利だね」

優月はそう言いつつ、空の連絡ボックスを見る。取り敢えず、適当なスタンプを送った。


「よっ!優月くん!優愛ちゃんに告ったんだって!?」

「うわ、堀田くん!?」

「…連絡先交換しよ」

「いいよ」

次に俊樹と連絡先を交換した。

「…で、優愛ちゃんとは連絡先、交換したの?」

「え、スマホ初めて触ったの昨日だから、まだだよ」

「どおーりで、今まで告白できなかったわけだぁ」

俊樹はクスクスと笑う。優月は不遜そうに笑い返す。

「…まぁ、時間見計らって、連絡先繋ぐよ」

その時、ひとりの女の子が、プリンを手にして話しかけてきた。


「優月!優愛ちゃんとの連絡先、繋いだか?」

「え、あ、美咲!」

それは元吹奏楽部の御本(みもと)美咲(みさき)だった。ちなみに楽器はフルートだった。

「優愛ちゃんに告白できたんだろ?」

「うん。想大くんのお陰でね」

優月は胸に手を置いて言う。その想大は、他の美術部部員と話していた。

「…なら、優愛ちゃんに交渉しとく?」 

そう言って彼女は、プラスチックスプーンを突きだした。半透明のスプーンに、安っぽい光が反射した。

「え、いいの?」

「うん。どうせ会えないでしょ?優愛ちゃんは部活ある訳だし」

「それは……助かる!」

もう告白した身だ。決着も付いている。優月は遠慮なく頼んでおいた。


「では、毎年恒例!!雑巾がけリレーをします!」

時間が経つと、雑巾がけリレーに参加させられた。早い順に景品が貰えるという。

「美咲と同じチームになるとは…」

「想大と一緒がよかったろ?」

「うーん…、想大くんは運動神経鈍いからなぁ」

そう言っていると、それぞれレーンに並ばされる。優月は仮装のメガネを外す。

「美咲は?メガネ外さないの?」

「外すか。本気になりたいし……」

その刹那、雑巾がけリレーがはじまった。

「うぉらぁぁぁぁあああっ!」

「頑張れ、美咲!」

優月は、美咲を応援する。美咲は猪突猛進型で、雑巾で進む他の選手を、吹き飛ばす勢いで突っ走る。

しかし結果は…3着と微妙な結果であった。


「あーっ、悔しい」

「お、惜しかったね…」

悔しがる美咲を、優月は優しく宥めた。

「…まぁ、景品もらえるしいいや」

しかし美咲は、景品を手にすると上機嫌に戻った。

(美咲って…自称拝金主義だもんな)

呆れつつも、残りのイベントを楽しんだ。

 


 打ち上げが終わり、気がつけば夕方だった。山並みは夕日で萌えている。桃色の光が淡く夕方を告げていた。

「…優月、まだ連絡返ってこないんだ。ごめんね」  

まだ優愛から返信が来ないと、美咲に謝罪される。

「う、ううん。どうせ付き合った訳じゃないし…。友達としてだから焦ってないよ」

優月はやんわりと言う。

「…また連絡するから」 

「ありがとう」

やはり、美咲は俊樹とは違って、献身的に協力してくれた。




――数日後♪

 しかし意外にも、優愛との連絡先は簡単に繋げられることとなる。

〈御本美咲〉からの連絡は待てど暮らせど、来る気配がない。優愛との交渉が難航しているのだろうか?

「…はぁあ」

 ある日の午後、公園のブランコで遊んでいた。最近のポップスを聴きながら、目いっぱいブランコを漕いでいた。

「…優愛と連絡…まだかな」

告白して数日。優愛との連絡先は、まだ繋げていない。そもそも優愛は何と言うのだろうか? 

流石に断らないだろうな、と不安に満ちていた。そんな時だった。


「…優月くん!!」

誰かがこちらへ名を呼び掛けてきた。

「…あ、優愛ちゃん?」

優月はつい驚いてしまった。

そこにいたのは、部活もなく早帰りの優愛だった。

「…優月くん、久し振りだね」

優愛はそう言って、そのまま話しかけに来てくれた。

「…優愛ちゃん、部活はないの?」

優月がやんわりと訊ねる。今、ここを通るには早すぎる時間だろう。

「…今日は水曜日だから、部活はないんだよ」

すると優愛はこう答えた。

「あ、そっか。今日は水曜日か」

中学3年生の春休みは、随分と長い。曜日感覚も失われつつあった。

「…そう。そういえば、優月くん」

「ん?」

「…御本先輩から連絡来てて、連絡先交換しない?」

「え、美咲から…?」

「うん。連絡先、繋ぐ?」

優愛が自然な言葉で問う。

「うん!」

優月は迷わずスマホを差し出す。すると優愛は学校帰りだというのに、普通にスマホを取り出した。淡い水色のスマホは、あまりにも可愛らしくて羨ましい。

「…いい?」

「うん!」

ふたりは連絡先を交換した。

「…よろしくね」

「僕こそ。よろしくね」

優月と優愛の関係は新しく、ここから始まった。



 それから、優月と優愛はよくメールするようになった。

〈優愛ちゃん、吹部ってどう?〉

〈すごく楽しいよ〜〉

〈そうなんだ〉

〈優月くんは高校入ったら、部活はどうするの?〉

〈それなんだけどね……〉

〈?〉

〈僕も吹部、始めようかなって思って〉

〈えッ!?〉

〈優愛ちゃんの打楽器見てたら…やりたくなって〉

〈それは嬉しい!〉

〈どうかな?〉

〈いいと思うよ!〉

〈ありがとう〉

こうして、他愛もない連絡をしながら、優月はかつての幼少期を思い出していた。



――幼少期♫

 優月は小さい時、女の子のような見た目をしていた。たまに髪もしばるので、優愛との家族ごっこでは母役もさせられていた。

『…優月くん、どうして髪をしばってるの?学校ではしばんないよね?』

『小学校でしばると…イジられるからね。優愛ちゃんは髪を縛ったときの方がいいんでしょ?』

『うん!ママみたいに可愛い!』

『そ、そうなんだ…』

優月は幼いながらも驚いた。

すると、優愛はおもむろにシロツメグサを摘む。

『…私、妹とか弟いないから、優月くんといると凄く楽しい』

『…そうなんだ。僕には妹いるんだ』

『へぇー。お名前は?』

『…美優だよ』

『いい名前だねー』

優愛は話しながら、シロツメグサを連鎖させる。徐々に王冠の全容が見えてくる。

『…だからさ、ヘアゴムとか大量に買ってたみたいで…。余ってるヘアゴムを消費させられるんだよね』

優月はそう言って呆れたように笑った。その表情はひどく穏やかだ。

『…そうなんだ。大事な妹さんだね』

そう言って優愛は、完成したシロツメグサの王冠を差し出す。

『…はい!完成!』

『器用だね。優愛ちゃん』

『へへ、幼稚園でいっぱい作ってたから』

『そうなんだ』

すると優愛は、優月へ王冠を被せた。

『うわっ、王冠…いいの?』

満足そうに笑う優愛に、優月は申し訳なさそうに訊ねる。すると彼女は楽しそうに笑う。

『いいの!こんなのいくらでも作れるから!』

『あ、ありがとう』

優月が和やかに笑って礼を言う。すると優愛は子供っぽくニヤニヤと笑う。しかし、その笑みは泥棒のように怪しく見えた。

『……その代わりに、優月くんはママ役ね!』

『え?』

『嫌なら娘役でもいいよ』

優愛のこの提案を、断り切ることができなかった。

『む、娘役で……』

こんなやり取りが、小学校高学年まで続いた。



――現在♫ 

 思い出を整理するうちに、優月はひとつの結論へと辿り着いてしまった。

「…もしかして、直接…連絡を繋ぎたかったの?」

優月が優愛に問う。もちろん、推測の域は出なかった。

「…うん」

しかし優愛はこくりと頷いた。

「優月くんと…友達なんだし…直接繋ぎたかった」

彼女はこう言って、幼少期の頃のように笑ってくれた。

 優月は淡い思い出を見つめる。もう戻れない過去。それでも愛おしく胸の奥には存在している。


 もう戻れずとも、また…あの頃みたいに、たくさん話せたらいいな。

優月は恋愛とは違う感情を、優愛に芽生えさせていた。



――そして、この1カ月後、小倉優月は東藤高校吹奏楽部へ入部することになるのだ。




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次回の公開をお楽しみに♪

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