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【特別版】 吹奏万華鏡 青春(アオハル)の茂華楽章  作者: 幻創奏創造団
小倉優月世代 
3/13

♪2楽章 月に叢雲花に風 幼馴染への告白

 小倉優月のひとつ下の幼馴染、榊澤(さかきさわ)優愛(ゆあ)

優月が小学1年生のときに、近所の公園で出会って以降、好きになった女の子だ。絵を描くことや、ダンスをすることが好きだった。


 そんな彼女が吹奏楽部へ入ったことは…意外だった。初めて聞いた時は、まさに青天の霹靂。あの時の感覚は忘れられないなぁ。だって入学前から一緒の美術部に入ろう、って彼女と約束してたから。


 しかも1番驚いたことが、優愛は打楽器パートで大活躍していたこと。いつもの可愛らしい顔とは違って、すごく真剣に楽器を奏でている。しかも、すごく上手で初めて彼女の音を聴いた時、震えちゃった。

でも、そんな音色と憧れと引き換えに、小学校時代のようには、頻繁に話せなくなった。コンクールや演奏会で公園でも遊ばなくなった。

寂しかったけれど、その度、僕の優愛に対する憧れは、更に高まった。


 だから僕もいつか…そんな音を出せる奏者になりたい。でも、その前に…優愛に告白する。




――卒業式の数日前♪

「瑠璃ちゃんに頼みがあるんだ!」

昼休みの音楽室前の廊下で、小林想大が誰かに頼み込んでいた。

「えっ?な、何ですか?」

その誰かとは古叢井(こむらい)瑠璃(るり)。榊澤優愛直属の後輩だ。そんな彼女は少し驚いていた。

「…優月くんが、優愛さんに告白するのを…手助けしてほしい!」

そして何を言うかと思えば、告白の助太刀(ヘルプ)だった。瑠璃はあたふたと慌てる。

「え…、小倉先輩が、優愛お姉ちゃんに告白する?」

瑠璃と優愛の関係は特別だ。本当の姉妹のように、ふたりは仲が良い。 

それを承知して尚、想大は頭を下げた。

「…瑠璃ちゃん、優月君が優愛ちゃんに告白できるように、手伝ってほしいんだけど…」

改まった願い。本気だ。

想大がそう言うと、瑠璃は「えっ!?」と驚く。


「おねーちゃんに告白する人いるんだー」

瑠璃がしみじみと言うと、想大は「うん」と言った。

しかし刹那、瑠璃の口から出た言葉。

「私が優愛お姉ちゃんを狙う輩を、追い払ってたのに…」

「えっ?」

衝撃の言葉に、開いた口が想大は塞がらなかった。



――数ヶ月前♫

 聞けば2人ほど、優愛に言い寄る男子生徒を、追い払ったらしい。

『風麻、優愛お姉ちゃんにナニしてるの?』

『え、いや…』

羽井(はねい)風麻(ふうま)。サッカー部で、瑠璃のクラスメートだった男子だが、優愛にハンカチを拾われ、天使のように微笑まれたことで惚れたのだ。

『優愛お姉ちゃん困るよ』

『…な、なに言ってるんだ…!』

瑠璃は彼の付きまといを見抜いていた。それでも風麻は言い訳を続けようとしていた。

『これ以上、おねーちゃんに付きまとったら…』 

しかし、瑠璃にとって優愛の危機は許さない。彼の前で平手を突き出す。

『ギュッとしてどーん…だよ』

刹那、彼女は悪魔のように、狂気的な笑みを浮かべて、拳を彼に触れる少し前まで突きだした。

『…分かったぁ?』

『…は、はひ』

瑠璃は純粋な笑顔で制約を迫る。風麻は顔を青ざめさせながら、優愛への中途半端な愛を諦めた。


 この事件は当時、学年内では有名だったらしいが、そんなことを3年の優月と想大が、知る由もなかった。



――現在♫

「おねーちゃんに…彼氏かぁ…」

彼女はそう言ってはいるが、優月と優愛か付き合うことは多分無いだろう、と想大は思った。

……というか、大丈夫なのか?想大は心配になった。

「…優月先輩なら…いいよ!」

しかし瑠璃は意外にも、快諾してくれた。

「優月君だったら?」

だが、優月なら良いのか?気になったが、

「あの人、おねーちゃんも好きそうだもん」

これが瑠璃の答えだった。

「ありがとね」

瑠璃の好意的な返事に、想大は頭を下げる。


「…で、何すれば、いいんですか?」

すると瑠璃が具体的な内容を訊いてきた。

「…ちょっと、香坂さんって部長を引き止めてくれれば…」

想大の願い。それは告白への横槍の排除だった。新部長である香坂(こうさか)白夜(はくや)が、優愛に付きっきりなばかりに告白できないのだ。

それを聞いた彼女がニコッと笑う。

「分かりました!来ないように言っておきますね」

その言葉に想大は安心した。

「ありがとな。瑠璃ちゃん」

その言葉に、瑠璃の胸はきゅん♡と撃ち抜かれた。




――告白前日♪

 小倉家がほとんど寝静まった頃も、優月はミニカードに手紙を書いていた。何を書けばいいのか?頭の中で沢山の候補が踊っている。

「…ラブレターっぽい言葉…ないかなぁ」

優月は考えに考えた結果、ラブレターを優愛に送ることにした。

《優愛ちゃんのことが好きです》

文字に書いた頼りない一言。それをマジックペンでなぞっていく。

「…うーん、付き合ってとかは違う気が…。あの子も吹奏楽で忙しいはずだし……」

やっぱり、と優月はペンの動きを止めた。

「…好きでした、の方が失恋を受け入れやすいや」

優月の中で失恋は折り込み済みだ。それでも想いは伝えたい。こうしてラブレターを書いた。


 そのあと、ミニカードにラメシールを貼り付ける。特別感が出てお勧め、と友達に言われたからだ。

「ミニカードの方が、大きな封筒に入れるより、目立ちにくいし…これで良いはず!」

優月は書いたラブレターを、小さな手紙入れに挿入した。

誰にも告白は聞かれませんように。願いながら、そのまま眠りについた。



――翌日♪

 昼休み、優愛たちのクラスはお楽しみ会だったらしく、優愛は来れなかった。

奇しくも想大の計画通り、放課後に渡す展開となった。

「…優月君、頑張ろう!」

想大がそう言って、優月の背中を思い切り叩く。

バンッ!と硬い音が響く。

「う、うん…」

ロータリー近くは、下校する生徒の足音や話し声で溢れていた。

「…てか、本当にラブレター渡して終わりなの?」

想大が訝しげに訊ねる。

「…だって、皆に聞かれるじゃん…」

気弱に言う優月の手には、小さな真っ白の小さな封筒があった。これが昨夜書いたラブレターだ。


 そのとき優愛が白夜と、そして瑠璃と話していた。楽しそうに笑う優愛は星のように煌めいている。

「…来たー」

優月は、頭の中が真っ白になる。恥ずかしくて逃げ出したい感覚に襲われた。

「…ホラ、行っけー!」

想大が優月の背中を押す。


 一方、瑠璃は香坂白夜に、真剣な表情をして話し掛ける。

「白夜先輩、ちょっと…優愛お姉ちゃん借ります」

瑠璃はそう言って、白夜へ会釈したその刹那、優愛の手を引いて歩き出す。

ここまでは、想大の計画通りだ。さすが瑠璃だ。


 優月もまた、優愛へ駆け寄る。千載一遇の告白(チャンス)を逃したくない一心で、彼は優愛を見つめる。

そして、優愛に真剣な表情で声を掛ける。

「優愛ちゃん、あの…伝えたいことがあります」

「…な、何?」

その真剣な声に、優愛はいつになく驚いていた。


言える!優月は勇気を振り絞って……想いを口にする。

「…優愛ちゃん、す、好きです!付き合ってください!」

しかし告白に熱が入り、思わず付き合ってください、と言ってしまった。恥ずかしさで頬を赤く染めた。

すると告白を聞いた優愛は「えぇ~っ!」と小さな声で叫ぶ。余程驚いているのか、丸い瞳がぷるぷると震えている。

「…優愛ちゃん、凄い部活、頑張ってる所みて元気出た…」

「…それは…良かった」

優月がありのままの気持ちを、驚愕している優愛へと伝える。これが今の気持ち、そして、ずっと伝えたかった想いだった。


 それを遠目に見ていた想大に、瑠璃が微笑ましく話し掛ける。

「本当に仲良いんですね」

「…小さい頃から、遊んでた2人だったからな…」

想大はそう言って、肩をすくめた。ニヤニヤと面白がるような笑みはなく、映画を見て感動しているかのようだった。

「へぇえ。羨ましいなぁ」

「瑠璃ちゃんは…そういう子とかいたの?」

「ううん。ずっと…ひとりでした。いいなぁ」 

瑠璃はそう言って、緩む頬を赤らめた。


その頃、優愛は肝心な返事を言う。

「……付き合うのは…ちょっと難しいけど、友達としてなら…いいよ」

「…と、友達として…なら…いいの?」

「うん!それと…もう遠慮しないで、話しかけてきてよ!」

その言葉は、優月の思っていた返事より、遥かに嬉しいものだった。

「ありがとう!優愛ちゃん!」 

ふたりの髪が春風に揺れる。髪先は自由に踊り揺れた。夕日の淡い光にふたりは照らされる。

このふたりにとって、お互いの和み顔が世界のすべてだった。




 僕は告白した達成感で、頬が緩みっぱなしだった。あの晴れ晴れとした気持ちは、一生忘れられない。けれど事実として振られた。それでも…まだ友達としていられる。

何より、僕はそれが嬉しかった。優愛とまだまだ居られるのだから。


彼女との時間。

それは…きっと何より、僕が欲しかったものだ。





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次回の公開をお楽しみに♪

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