表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【特別版】 吹奏万華鏡 青春(アオハル)の茂華楽章  作者: 幻創奏創造団
榊澤優愛世代
10/14

♪9楽章 争奪戦! カメラに写れ!

 その一方で、トランペットなどの金管パート練習室。そこは慌ただしさに満ちていた。

「ホラ、雄成くん!写ろうよ!」

「えっ、俺は大丈夫…です…」

「えぇ…。そんなぁ、勿体ない…」

「…小学生たちに譲ってあげてください」

その生真面目な声を聞いた横堀(よこぼり)未久(みく)は頬を膨らませた。

「えぇ、仕方ないなぁ。澪子ちゃん!映る?」

「いえ、私もパスで!」

「えぇ…、1年生も遠慮してるし、写りたいの私だけ?」

未久はとても不満そうだった。

「せっかくですし、横堀先輩だけでも写ったら、いかがですか?」

坂井(さかのい)澪子(みおこ)がトランペットのマウスピースに、息を吹き込みながら助言した。

「…んもぉう、仕方ない。浅野くーん」

すると未久は、1年生を強制的に連れて行ってしまった。


 未久が、1年生の浅野(あさの)影寿(えいじゅ)を連れて、向かった先は中北の向けるカメラだった。

「はいはーい、皆!楽器を向けて〜、はい!チーズ!」  

そう言ってフラッシュと、乾いたシャッター音が鳴り響いた。

 ホルン、ユーフォ、トランペットを向けた、数人の小中学生と高校生。それは県の広報に載せる写真の撮影だった。

「はい、おっけー。じゃあ、私たちは打楽器の方に行きますね」

そう言葉を残して、中北は音楽室へと向かった。



――音楽室 ♬

 その頃、パーカッションたちは、休憩の雰囲気となっていた。小学生の秀麟と奏水が、希良凛と優愛に雑談を持ち掛けている。

「そういえば、松山先生に聞いたんだけど、このあとの写真撮影知ってる?」

奏水が優愛へ問う。優愛は知らずに首を横に振る。

「…なんか、各練習室ごとに、写真を1枚だけ撮って、県の広報に出す…とか」

そこへ秀麟が助言した。

「へ、へぇ…。知ってた?さっしー?」

「いえ。知らなかったです」

やはり、ふたりは知らなかったようだ。

「写真に写りたいね」

優愛が目を煌めかせる。

「…はーい」

希良凛も笑顔で同意した。


しかし、ひとりだけ…そんな話題を嘲笑う者がいた。

(写真か…。くだらない…)

それは高校生でもなく、小学生の堀江玖打だった。玖打は淡々とボンゴをたたいている。先ほどより更に、音の細かさが増している。

「…俺は何度も写真に写った。今更、県の広報如き驚きゃしない」

棘のある玖打の声。それは彼の活躍にあった。


「…玖打は気にしないでください。あれは特別なんで」

すると突然、秀麟が笑いかけてきた。優愛は意味が分からず、目をキョトンとさせる。

「玖打、去年のソロコンテストで全国大会に出たんですよ」

「えッ!?凄い!」

優愛が驚く理由。それはかつて、優愛もソロコンテストに出たことがあるからだ。


「…その時、すごく取材が来たんですけど、玖打はツンツンしてたんで……」

秀麟の声にも、玖打は眉ひとつ変えない。ただ打楽器と向き合うばかりだった。

「へー…」

優愛は凄い子なんだなぁ、と声にならない声で、心の中で呟いた。



 その頃、音楽準備室でも、瑠璃と美玖音は雑談していた。

「…えっ!?写真に写りたーい!」

「でしょう?なら、写れるように頑張らなきゃ」

美玖音と瑠璃も、写真撮影の話しをしていた。広報に使われる写真は1枚だけ……、瑠璃だって当然、出たいと思う。


「ははは、古叢井さんも出たいか」

そう言って笑う人物は、瑠璃と同様にドラムセットを務める緋波(ひなみ)俊和(としかず)だった。彼は面倒見の良い高校2年生だ。

「えへへ、出たら家族に自慢できるので…」

「か〜わい〜い〜!」

美玖音は瑠璃を愛でている。ただの可愛い後輩としか見えていない。

「こーら、朱雀。古叢井さんが困ってる」

「困ってないですぅ…」

瑠璃は俊和とも仲良くなっていた。


 そうして、各所楽しんでいた時だった。

「練習は…してるか〜な?」

笠松明菜と中北楓がやってきた。その手にはカメラが握られている。

それを見た女子たちが、突如として目の色を変える。撮影されるに恥じない練習を始めた。

「そんなに写りたいか…?」

それに玖打は褪せた視線を送った。


「…はい、今から撮影しまーす!」

「…!?」

同時、瑠璃と美玖音が楽器室から飛び出した。ふたりも結局は、写真に写りたいのだ。

「この写真、県の広報に載せるので、写ったら多分、有名人になれます!」

「多分なんかい!!」

そう言うと、笠松がチョコチョコと動き回る。

「いい位置だと思ったら撮影しまーす!皆は写れるかな〜?」

そしてそう言った。その言葉に反応するように、優愛と希良凛がカメラのレンズの位置に固まる。しかし、彼女は意地悪そうに移動する。

「…はっ?」

そして玖打の真後ろで、シャッターを押した。想定外のフェイントに、意味のないフォーム。

「…え!絶対後ろ姿の、堀江くんしか写ってない!!」

希良凛が異を唱えようとした時だった…。


「あ、ブレたんで、もう1回撮りまーす!」

笠松がそう言って、バッサリと切り捨てた。

「…俺はいいんだが」

玖打は迷惑そうな顔をしながら、スティックをボンゴへたたきつけた。彼の頭には演奏、しかない以上、写りたい人たちにとっては、この上ない邪魔だった。


「…さてさて、写れるかなぁ?」

すると瑠璃がスティックを持って、レンズの方へと飛び込んだ。

(ドラムは絶対に撮ってくれない…。なら、優愛お姉ちゃんたちと写る!!)

瑠璃はドラムとのツーショットを諦め、顔だけでも写真に写る作戦に切り替えた。

 それは美玖音も同じで、マレットを持ってカメラの最前列へと飛び出る。

「もう少し遠目に撮ろうかな?」

しかし笠松はそれを、ひょいと躱して明後日の方にカメラを向けた。

「…うぅっ!?」

ことごとく、カメラに写る人たちを躱していく。笠松の俊敏な動きは是が非でも、人を撮らせたくないような意思が汲み取れた。

 こうして、カメラに写ろうと前に立っては、カメラから躱される、極めて意味不明な状況に陥った。


「…あはははっ」

中北も苦笑を禁じ得ない。そのカオスな様子に、彼女が終止符を打つ。

「…はいはいー。撮りまーすよ!」

中北が言うと、笠松のイジワルが止まった。


「みんな、仲良くなった?」

すると中北が皆に歩み寄る。

「ひぃぃん…。なってますよー」

優愛が泣きながら言う。

「え!?優愛お姉ちゃんが泣いちゃった!?」

その光景に瑠璃が思わず、言葉を失った。

しかし、

「嘘泣きだよ」

優愛は嘘泣きと言って笑った。

刹那、辺りが笑いの渦に巻き込まれた。


「嘘泣き上手ー」

「だね」

奏水と秀麟も賞賛するが、玖打だけは無反応だった。ただスティックを握る力を強めただけだった。



 笠松が全体的にカメラを向ける。これなら、見える顔は小さいが全員が写る。

「まぁ、パーカッションだけは、特別全員写してあげますか」

その言葉に、瑠璃が「やったぁー」と喜ぶ。

「はい、チーズ!」

そう言って撮られた……写真。

 その写真は数週間後、茂華町と県の広報に掲載されたのだった。



      ♪     ♪     ♪




 そして本番は―――

「古叢井さん、カッコよかったよ!」

「優月先輩、ありがとございます!」

大盛況を収めたのだった。

優月がその証として、瑠璃をべた褒めした。優月も同じ打楽器奏者として、彼女を尊敬した。

 すると瑠璃が意外なことを言う。

「…そうだ。私ね、東藤高校の文化祭行こうと思うんだ」

「えっ?大丈夫なの?茂華祭も近いはずなのに」

優月が心配する理由。それは瑠璃も茂華祭に向けて、吹奏楽部だって練習があるからだ。

「…でも、想大先輩、今日は体調崩してて会えなかったから…」

瑠璃の純粋な声。想大が体調不良というのは方便だったのに…。


「私も行きたい!」

すると優愛もその会話に参入してきた。オイオイ…と心の中で苦笑しつつ、

「楽しみにしてる」

優月はそう返した。

まさか、優愛まで来たいと言い出すとは……。


「さっしーも誘おうっと!」

「…お、おぉ」

優愛は文化祭が楽しみで、仕方なかった。





ご覧いただきありがとうございます!

是非、感想や評価、ブックマークやリアクション等を宜しくお願い致します!

次回の公開をお楽しみに♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ