二浪の重圧
これまでにない準備をし、ひっきりなしに誘いの手を伸ばしてくる闇とも戦い抜き、生れて初めて受験戦士となった私は、三度目の受験シーズンを、地味なお弁当をぶら下げて、淡々とこなしていった。しかし、二浪という重圧とストレスは、思った以上の負担になっていたらしかった。
四校目の大学を受けた晩から、私は寝込むことになってしまったのだ。子供の頃に時々罹っていた自家中毒というやつだった。胃袋に石が入っているようで、唸りながら寝ているしかない。食事が、一切、取れなくなった私は、お尻にブドウ糖の注射を打たれ、あっという間に、日本一情けない浪人生になってしまった。
寝込んでいる間に、先に受けた大学の結果が開きだした。自分で結果を見に行くことも出来ないのに、これがまた不合格と補欠ばっかりで、胃に悪いことこの上なかった。
私は、薄い番茶、具のないお吸い物をわずかにすすり、干からびた鯨のようにベッドにドタッと寝ながら、ちっとも効力を発揮しない、予備校からもらった合格しゃもじを呪っていた。
そんな日が、四日続いた。五日目の朝、ふらつきながらしゃがんで体重を量ると、なんと六キロも体重が減っていた。浪人中にだいぶ増量していたので、この結果に思わずにやけてしまったが、実は、笑っている場合ではなかった。
私がどうしても行きたいと願い、二浪を決める決定打となった本命の大学の入学試験が、迫っていたのだ。
大本命の入試の前日。その日は、朝からどんよりとした天気で、夕方からは霙が降り出していた。私は、その日も、食事など喉を通らず、薄い番茶をすすっただけで、再び石のように重くなった胃袋を抱えて、ベッドに横たわることしか、できずにいた。
日も暮れた頃、母がベッドサイドにやってきて、私にこう尋ねた。
「明日どうするの? 受けに行ける?」
私は、一応考えてみた。うちから試験会場まで、二時間近くかかる。天気予報は、かなりの積雪になると告げている。そんな中を、この石のように重たい胃袋を抱えて、吐き気も収まりきっていない状態で、どうやって行くというのだ。例え行けたところで、どんな答案が書けるだろう。
無理だ。私は黙って首を振った。
「そう、わかった。それでいいのね」
母に念を押されても、私の決意は変わらなかった。これでいい。これが私の人生なんだ。私は何度も自分に言い聞かせた。そして、誰もいなくなると、体を絞って泣いた。




