深くて大きな闇との戦い
午前中は、自由にのびのびと過ごして、午後からはしっかり勉強する。この生活は自分に合っていたようで、模擬試験の点数も、だんだん上がってきていた。よしよし。このまま粛々とやってゆけば問題なしだ。
しかし、いつ頃からか、感じたことのない大きくて深い闇が、片時も私から離れずにいることに、気がついた。
浪人生とは、学生でも社会人でもない、浮き草のような寄る辺ない立場だ。その上、どんなに一生懸命勉強したとしても、翌年、大学に合格できる保証はない。そう言うことを考え出すと、驚くほどの早さで、不安と絶望に心が引っ張られた。
そう言えば、東京の名門高校出身の青年が、夜中に両親を金属バットで殴り殺した事件があったな。眠れない夜に、そんなことを思い出した。確か彼は予備校生で、しかも二浪中だった。
もし、この闇に捕まったら、私には、彼のように人を殺すことなど出来ないだろうから、きっと自分を殺してしまうだろう。
底なし沼となった闇は、いつでも大きな口を開けて、おいでおいでと私を手招きしていた。一度落ちたら戻って来れないとはわかっていたから、私は必死に目をそらし、目の前のノルマにしがみついた。とにかく粛々とスケジュールをこなした。生きるために、生き残るために。
こうしてまた一年が過ぎ、いよいよ最後の受験シーズンを迎えた。




