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大丈夫、春は来るから 受験劣等生の合格体験記  作者: たてのつくし


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順調な滑り出し

 あの、夕日に背中を押されるように、もう一年浪人することを決めた日以来、私の中の何かが吹っ切れ、なんだか新しい気持ちで、前を向けるようになった。


 まずは真正面から両親と対峙し、もう一年浪人したい旨を真摯に訴えた。そんな私を見て、これまでと違う何かを思ったのか、そんなに言うなら、あと一年頑張りなさいと、両親はもう一年、浪人することを許してくれた。


 無事に許しを得ると、私はまず、自分についてじっくりと考えた。私はどういう人間なのか。どういう勉強の仕方が、本当は向いているのか。そこに、少しでも偽りがあったら明日はない、と思っていたから、真剣だった。


 何しろ、これまで勉強においては、ずっと厳しい監視下にあったため、私には自主性というものが全く機能していなかった。でも、本当に学力を身につけるためには、自主性こそが必要不可欠。だとすれば、本当に自分に合った勉強の仕方にしなければ、これまでの繰り返しになる。


 そう思った私が最初に決めたことは、もう予備校には通わない、ということだった。行ったって講義なんぞ聞きやしないのだ、私は。そう言う勉強の仕方は、向いていないのだから。

 でも、二浪目は一人で勉強しますと言っても、両親は許してくれないだろう。これまでの自分を振り返れば、それも無理はない。ならばどうするか。私は、予備校に通うふりをすることにしたのだ。


 去年と同じ予備校に入学金を払ってもらって入学すると、その予備校から学生証が渡される。両親には予備校までの定期も買ってもらった。そして、新学期が始まると、私は何食わぬ顔で、毎朝、同じ時間に家を出た。

 まるで、リストラされたことを、家族に打ち明けられないサラリーマンのようだったが、悲壮感はなかった。いや、むしろこれまで経験したことのない、開放感を感じた。


 ストイックは向かず、むしろ少し遊んだ方が、勉強に集中するはずだと知っていたので、午前中は自由に遊ぶことにした。そして、思い切ってそういう生活にした途端、朝起きると、今日は何をしようかと、わくわくした。


 遊ぶと言っても、お金のない浪人生のこと、大抵は、町を気ままにぶらついたり、大きな書店で本を眺めたりして過ごした。お小遣いがあるときは、映画を見たり、プラネタリウムにもよく行った。何しろ定期券を持っていたから、移動にはお金がかからなかったのだ。


 何にもする気が起こらない日は、山手線に乗って、ぐるぐる回っていた。電車の中で、ぼーっと外を見たり、本を読んだり、居眠りをしたりして過ごした。そうやって、午前中いっぱい、自由に過ごした。


 少し話は逸れるが、浪人二年目の春、予備校に入学金を納めた帰り、私は予備校の本屋で『大学合格必勝法』とか言う本を見つけた。


 早速買って読んでみたのだが、この本が実によく出来ていた。私からしたら、驚くような勉強法がいくつかあったのだが、その中でも、数学が一番、驚いた。

 何しろ真っ先に書いてあることが、『とにかく問題文を読んだら、模範解答を暗記せよ』なのである。数学で暗記? 歴史の年号じゃあるまいし。ほんまかいな。


 とはいえ、反発している時間もないので、半信半疑でありながらもこのやり方を実践してみたところ、思った以上の効果があった。

 ただ解き方を丸暗記しただけなのに、やり続けていくうちに、似たような問題にぶつかると、問題文を読んだだけで、それを解く道筋が見えるようになった。さらにやり続けたところ、ついには数学的な意味も理解出来るようになったのだ。


 この調子で、各科目の勉強の仕方が、かなり具体的に書かれた本だったのだが、そこに一番重要なこととして、『まずは、時間をかけて、一年のスケジュールをたてよ』とあった。しかも、そのスケジュールの良し悪しが合否を決める、と、かなり強い調子である。


 よし。まずは一年のスケジュールを立てよう。私は、教科書や参考書を並べ、あれこれ書き出しながら、予定を立ててみた。

 やってみると、まずは、一年がいかに短いか、勉強する時間がいかに有限であるかが、良くわかった。その上で、一年の大体の方針を決める。まずは夏までに入試の基礎力をつけ、秋までには入試レベルまで持って行く。そして、秋以降は、実戦に向けて、勉強を積む。


 調子が乗らなかったり、体調を崩したりする日もあるだろうから、スケジュールには必ず余白も入れよう。何もしない日、というのも、私にはきっと必要だ。ああでもない、こうでもないと悩み、何度も訂正し、結構時間がかかった。でも、ここでしっかり予定を組んだことは、成功の鍵の一つにはなったと思う。


一年の予定をたてたことにより、ひと月の予定、そこから一週間、一日と、予定は自然に決まっていく。場当たり的な勉強ではなく、きちんと流れを持った勉強になっていたから、その件に関しては、いらぬ不安を持たずにすんだ。

 

 一日のスケジュールは、必ず前日にたてていたから、午前中たっぷり遊んだ後は、それにしたがって勉強をすれば良かった。一日のノルマが終わると、翌日の予定を立てて、今日は終了。毎日、小さな充実感があった。


 このまま行けば、全ては順調に進みそうだった。けれど、やはり浪人生活とは、そんなに甘い物ではなかった。


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