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大丈夫、春は来るから 受験劣等生の合格体験記  作者: たてのつくし


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志望校を下げまくった、高校受験

 さて、父母姉が私立の中高一貫校出身である我が家で、初めて地元の公立中学に入学した私は、思いがけないほど、楽しい三年間を送ることになった。どうやら、地元の学校と私は、相性がいいらしかった。


 中学が、小学校とあまりにも違うので、私はとても驚いた。

 中学の先生達は、生徒を大人として扱い、小学校時代は、生意気で扱いにくい生徒だった私は、大人で物の分った生徒として、逆に信頼された。


 家での私は、母の顔に泥を塗った罪人であり、地元の中学に行かねばならなかった残念な子供だったが、その地元の中学が、私にとっては、信じられないくらい楽しい場所となった。


 私が受験に失敗した学校とは異なり、公立の中学校には、女子と同じ数の男子がいた。私には、学ラン姿の彼らは、小学校時代より少しかっこよく見えたし、毎日何かしら、馬鹿げたことや、面白いことをするので、退屈しなかった。私は毎日、そんな男子達を見て笑い転げた。


 学校ではそんな風に、生き生きと自由に飛び回っていた私だが、家に帰れば、夕食後は真っ直ぐに勉強部屋に直行する毎日が、待っていた。流行のドラマや音楽番組は、トイレに行く途中で、ちょっとだけ盗み見るのがせいぜい。

 しかし私は、この勉強部屋で、三年間、ほとんど勉強をしなかった。もう勉強なんてうんざりだったし、今思えば、静かに反抗していたのだとも思う。


 中学一年の秋くらいまでは、中学入試の余剰で、そこそこの成績を取れた私だが、それ以降はずるずると下降していった。

 毎日毎日「勉強しなさい」と、それこそ何千回も言われたけれど、それでやる気になったことなど一度もなく、私は口答えをしない子供だったが、黙ったまま勉強はしなかった。


 この頃の私は、家族が嫌いだった。学歴学歴って、それがなんだ。そんなもので、人の価値など決まりはしないのに。でも、もういい。私には信頼できる友人がいるから。私を評価してくれる先生だっているんだから。だから大丈夫。

 学力低下一方の私に、母がヒステリーを起こすたびに、ざまあみろと思っていた。


 そんな状態で三年間を過ごせば、当然だけれど、高校入試に影響が出た。両親が希望していた高校など論外で、私の控えめな希望校も無理だった。私にぴったりだと、担任教師が勧めてくれた高校が、学園祭などの行事が盛んだと知ると、勉強を放りだして学校行事に夢中になる私を警戒して、母は大反対し、結局、さらにその下の高校に、私は進学することとなった。


 がっかりはしたが、自分の希望が届かず、希望とは異なる進路決定は、着慣れたTシャツを着るように、身に馴染んだことだった。すべては想定通り、自分の事は分っている、そう思っていた。


 その思いに、ひっかき傷ができたのは、高校に入学して間もない、ある朝のことだった。真新しい制服を着て、同じ高校に通う友達と、最寄り駅で電車を待っていたときだ。

 ホームには、見知った顔がそれぞれの制服を着て、電車を待っていた。その中に、学区ナンバーワンの県立M高校の制服を着た一群がいた。

「やっぱり、あそこだけ輝いて見えるよね~」

私の隣で、T子が言った。

「確かに、そうだねぇ」

私は、本心がばれないように、明るい声を出した。


 そこには、私が片思いしていたO君や、才色兼備と名高いNさんなどが笑顔で群れており、そこだけ何だか輝いてみえた。きっとT子にもそう見えたのだろう。

「本当はあたし、ちょっと意外だったんだぁ」

続けてT子が言った。

「何が?」

「いや、だって、あんた生徒会役員もしていたし、あっち側の人だとばかり思っていたから」

「まさか」

私は肩をすくめた。

「私、そんなんじゃないよ」


 笑って答えながら、胸がぎゅっとなった。自分も心のどこかで、そんなことを思っていたのだ。でも、これが結果だった。勉強を怠けて、自分の進路を真剣に考えず、K高校の制服を着ることになった私。これが現実の私なのだ。




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