小さな村
「ジュン坊、芋出来たか?
公民館に持っていくぞ。」
「おら、10キロ出来たぞ。」
「お~い」
ジュンジは、玄関が賑やかなので起き上がり、玄関口まで出てみた。数人の男達が来ていた。
顔見知りばかりだが、まだスラスラと名前が言えない。
「あー」と声を出してみたが、
「おっ!」
「どうした?」
「寝てたか?」
「ゆんべ遅かったべ。」
「お前、配られた種芋どうした?」
「育てなかったか?」
「越して来て間もないからな。」
「何年だ?」
「5・6年だべ。」
「14か月です。」とジュンジが答えてみるが、男達の会話に消されてしまう。
「春に村長が皆んなに種芋配ったろ」
「食ったろ」
「蒸して食ったか?」
「都会の人だもの、バターで焼いたべ」
「フライドポテトだな。」
ジュンジは、何を話しているのか、分からないままだった。
頭の中でぐるぐると種芋が届いた事があったかと記憶を遡ってみる。新聞紙に包まった種芋が玄関口に置かれていた事。そんな事、あったかな。無かったような。思い出せるような。あれは、夢だったかな。
この村へ移住して来て驚く事は、沢山あるが、他人の家の玄関をまるで自分の玄関ドアの様に開けるのだった。当初は、いつも鍵をかけていたが、
「まだ慣れないのか?」と言われてから日中は、玄関に鍵をかけなくなった。
色々考慮して貰いながら、いつまでも仰々しいのも悪いと考えたからだった。
少しずつ親しくなって、畑で穫れたと野菜が届くようにもなった。その中に種芋が混ざっていたように思う。
つまり食べてしまったのだった。
「育て方分からないし。」
「そんなんオラたちに聞いてくれよ。」
「んだー。簡単だぞ。」
「種芋配られて、育てたら、自分の食べる分だけ取って、あとは、村に引き取ってもらうんだ。そんしたら、買い物券が貰えるんだぞ。」
「オラ、今年は、千円いくかな。」
「オラは、目標三千円。」
「去年の最高は、角の山田のじいさまが、一万円だったよな。」
「二年連続だよな。」
ジュンジは、皆の会話から何となく思い出した。
村が、種芋を配り、村民が育て、収穫したら、村が買い取る。それを道の駅で販売しその収益を村に還元する。
それが、この村の新しい計画だった。特に特色のないこの村が、考えた方法だった。
このじゃがいも計画は、三年め。もう少し収穫量が増えたらポテトチップにしようと誰が言っていた。ジュンジと同様、他県からの移住した村長の思いつきらしい。
今から五年前、ススキの揺れる季節に村長選挙があった。
「私、まだ移住して十年では、ございますが、
この村を精一杯、盛り上げて行こうと考えております。
この自然に恵まれたこの村を愛しています。
私を村長にして頂ければ、そんな皆様の笑顔を増やせると思います。
どうぞ、皆様の温かいご支援を賜ります様お願いいたします。」
村の商店の前で演説しても誰も振り向かない、聞かない。
さらに。
「村長なんて、今のままでいいべ。」
「別に代えるこたぁないよな。」
「よそから来た若い女に何が出来るんだよな。」
口々に好き勝手な事を言われてもめげる事無く演説していた。
「私を村長にして頂きましたら、まずこの自然を味方にして豊かな暮らしが出来るよう考えております。
季節の花が咲き誇る花の豊かな村に皆様と共にしていきましょう。どうぞ皆様、私、この若輩にお力をください。
花の豊かな村、花の村にしていきましょう。
皆様のお庭や畑の片隅に農作物を育てながら、村の発展について沢山のご意見伺いながら・・・はなの村!」
聞いていない村人達。誰もが現役が村長を継続するものだと考えていた。
しかし、ある日突然、現役村長は、継続を断念した。
「どうしただ!何があった!」
改めて『はながさく』を書き始めました。
よろしくお願いします。




