詩小説へのはるかな道 第46話 群像の部屋 じぶんの中にみんないる
原詩:じぶんの中にみんないる ー 年を重ねる詩
年をとるということは
今の私がただ一人いることじゃない
中二病の夜更けの叫びも
思春期の曖昧な沈黙も
初恋の震える指先も
仕事を始めた朝の緊張も
結婚式の白い光も
中年の影に寄り添うため息も
みんな、まだここにいる
胸の奥で、声をかけ合い
時に笑い、時に泣き
ひとつの身体に宿る群像劇
だから私は孤独ではない
過去の私たちが輪になって
未来の私を見守っている
年を重ねるということは
じぶんの中に、時代を重ねること
そしてその重なりが
静かに、やさしく、今の私を立たしている
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詩小説: 群像の部屋 じぶんの中にみんないる
ある夜、男は夢の中で不思議な部屋に迷い込んだ。
広いのに家具はほとんどなく、ただ円形に並んだ椅子がいくつも置かれている。
そこには見覚えのある人々が座っていた。
中二病の自分が机を叩き、世界の終わりを語り、
思春期の自分が黙って窓を見つめ、言葉にならない感情を抱え、
初恋の自分が赤い顔で手を震わせ、
社会人になりたての自分がネクタイを直し、
結婚式の自分が白い光に包まれ、
中年の自分が深いため息をついていた。
「ここはどこだ?」と男が尋ねると、
輪の中心から声が返ってきた。
「ここはあなたの中だ。私たちは消えずに、ずっとここにいる」
男は驚いた。過去は過ぎ去ったものだと思っていた。
だが彼らは笑い、泣き、互いに語り合いながら、
ひとつの群像劇を演じ続けていた。
中二病の自分が立ち上がり、叫ぶ。
「世界は偽りだ!俺だけが真実を知っている!」
すると思春期の自分が小さく笑い、
「そんなこと言っても、結局は不安だったんだろう」と呟く。
初恋の自分は頬を染めながら、
「でもその不安があったから、あの人の手を握れなかったんだ」と言う。
社会人の自分は書類を抱え、
「握れなかった手を思い出すたびに、仕事に逃げたんだ」と肩を落とす。
結婚式の自分が立ち上がり、
「それでも誰かと歩む道を選んだ。あの光は嘘じゃない」と静かに言う。
中年の自分はため息をつきながら、
「だが光のあとには影もある。影と共に生きるのが今の私だ」と続けた。
男はそのやりとりを見て、胸が熱くなった。
彼らは互いに矛盾し、反発し、時に慰め合いながら、
輪になって未来の自分を見守っている。
「孤独だと思うときもあるだろう。けれど、私たちはあなたを見守っている」
輪の声はやさしく響いた。
目が覚めると、男は静かな安心に包まれていた。
年を重ねるとは、ただ老いることではなく、
時代を重ねて立ち上がることなのだと、
彼はようやく理解した。
そしてふと気づいた。
夢の部屋にはまだ空いた椅子がいくつもあった。
未来の自分たちが座るための椅子だ。
その椅子が埋まる日まで、彼は歩み続けるだろう。
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:じぶんの中にみんないる
夜更けには 叫びを抱いた 中二病
まだ胸の奥 声をかけ合う
曖昧に 沈黙ひそむ 思春期よ
言葉にならぬ 影を見つめる
初恋の 震える指は いまもいて
未来の私を 見守り続ける
仕事始め 朝の緊張 ネクタイを
結び直して 夢を追いかけ
白き光 結婚式の まぶしさに
影も寄り添い 中年となりぬ
群像劇 胸の奥には みんないて
時に笑い 時に泣きつつ
孤独では ないと気づけば 輪の中で
過去の私ら 未来を見守る
年を経て 時代を重ね 立ち上がる
静かにやさし 今の私よ
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




